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7-4|四十首 ~ 五十九首|第7回 利休百首|千宗易利休|抛筌斎

全10回 抛筌斎 千宗易 利休



千利休の人物イラストと掛物「利休百首 四十首〜五十九首」を組み合わせた構成で、一座建立の精神を伝える冒頭画像。


■ 第7回 利休百首 ■

四十首 ~ 五十九首






❚ もてなしに宿る心のかたち

本項では、千利休がが遺した「利休百首」の中から、第40首から第59首までを取り上げ、それぞれの歌が持つ意味と背景を丁寧に読み解いてまいります。



ここでは、点前の細かな所作や客へのもてなしの態度など、亭主のふるまいにおける心配りが詠まれています。



利休の教えを通じて、一期一会の茶会に臨む心得を学びましょう。











❚ 四十首 ~ 四十九首


四十、

茶入又茶筅のかねをよくも知れ あとに残せる道具目当に

茶入や茶筅を元の位置に戻す時は、他の道具を目当てに置きなさい。


四十一、 

何にても置き付けかへる手離れは 恋しき人わかるると知れ

重い水指などを持ち上げる時は手軽に持ち、置いた手を離す時は恋人に別れを告げるように。


四十二、

余所などへ花を贈らば其花は 開きすぎしはやらぬものなり

他へ花を贈る時には、未来に楽しめる花(未開花)を贈るべきである。


四十三、 

水指に手桶出さば手は横に 前の蓋取り先に重ねよ

手桶水指の場合、手を横一文字に定座に置き、蓋(割蓋)は両手で前を取り、向こうの蓋に重ねて置きなさい。


四十四、

釣瓶こそ手は竪におけ蓋取らば 釜に近づく方と知るべし

釣瓶(利休好木地)の場合、手を縦にして置き、釜に近い方の蓋を取り、向こうの蓋に重ねる。


四十五、 

小板にて濃茶を点てるば茶巾をば 小板の端に置くものぞかし

風炉の板敷を使う濃茶の点前のときは茶巾を右前角に置きなさい。 (利休時代の点前)


四十六、

掛物の釘打つならば大輪より 九分下げて打て釘も九分なり

掛物の釘を打つときは、大輪(天井の回り縁)より九分(約27㎜)下の壁に打ち、竹釘の皮の面を上にしてやや斜め上向きにやはり九分の長さを残して打ちなさい。


四十七、

喚鐘は大と小とに中々に大と五つの数を打つなり

喚鐘は大小中中大と打ちなさい。銅鑼は大小大小中中大である。


四十八、

茶入より茶掬ふには心得て 初中後すくへそれが秘事也

茶入より茶すくうには初めは少し、二杓目は少し多め、三杓目はたくさん入れなさい。これは三度とも同じ量ではおもしろくないという教えで、濃茶を練るときもこのことに注意しなさい。


四十九、

湯を汲むは柄杓に心つきの輪の そこねぬやうに覚悟してくむ

湯を汲むときは、柄杓の合(湯を汲む円筒状の部分)と柄とがつなぎ合ったところ「月の輪」がゆるまない様に注意して汲みなさい。












❚ 五十首 ~ 五十九首


五十、

柄杓にて湯をくむ時の習には 三つの心得あるものぞかし

風炉の柄杓の扱いには三つの心得がある。 一、十分目まで汲まず、九分目まで汲む。 二、湯は底から、水は中程を汲む。 三、「油柄杓(だんだん上にあがる)」をしないように。


五十一、

湯を汲みて茶碗に入るる其時の 柄杓のねぢは肱よりぞする

湯を汲んで茶碗に入れる時は手首を回すのではなく、肘から回しなさい。こうすることで柄杓の合が安定し湯がこぼれにくく自然と茶碗に入るのです。


五十二、

柄杓にて白湯と水とを汲むときは 汲むと思はじ持つと思はじ

湯や水を汲もう、または柄杓を持とうと思うと手先に気をとられてしまう。手先よりひじを意識しなさい。


五十三、

茶を振るは手先を振ると思ふなよ 臂よりふれよそれが秘事なり

薄茶を点てる時は手先だけで振ると思わずに、ひじから振ると思いなさい。そうすることで茶筅が自然と動き、茶がよく練れ、よく点つのです。


五十四、

床にまた和歌の類をば掛るなら 外に歌書をば荘らぬと知れ

床に和歌を掛けるならば歌書を飾らないというように、道具の取り合わせはなるべく重複を避けなさい。


五十五、

外題あるものを余所にて見るときは 先づ外題をば見せて披けよ

由緒のある掛物、天皇の書かれた物等を床に掛ける時は特別な作法により、掛物を巻いたまま床に飾り、まずは外題をよく拝見してから亭主に床に掛けてもらいましょう。


五十六、

羽箒は風炉に右羽よ炉の時は 左羽をば使ふとぞ知る

風炉は「陽」なので「陰」の右羽、炉は「陰」なので「陽」の左羽を使いなさい。 風炉は上にあるから「陽」、炉は下にあるので「陰」になり、左は「陽」で右は「陰」となる。


五十七、

名物の茶碗出でたる茶の湯には 少し心得かはるとぞ知れ

名物の茶碗や由緒のある茶碗を扱う時は、常の茶碗の扱いと変えなければいけない。 茶碗を直接畳の上には置かず、古帛紗にのせて扱い、拝見の際も深くもっとも低い位置で行うこと。


五十八、

暁は数寄屋のうちも行燈に夜会等には短檠を置け

暁(暁の茶事)は「陽」なので行燈の「陰」、夜会(夜咄の茶事)は「陰」なので短檠の「陽」を使いなさい。


五十九、

燈火に油をつがば多くつげ 客にあかざる心得と知れ

客への配慮として、夜咄の茶事では、燈心(芯)は長いものを用い油皿にも油をなみなみついで明るさをたもち、夜が更けても客にゆっくりとどまってもらうようにしなさい。真のもてなしにはこのような心得が大切。












❚ 一期一会を生きる


第40首から第59首の歌には、亭主としての心構えや、点前の中で発揮される細やかな気配りが詠まれています。



それらは単なる動作の説明ではなく、すべてが「一期一会」の精神に通じています。


目に見えないところにこそ真のもてなしが宿るという利休の教えは、今日に生きる私たちにもなお深い示唆を与えてくれます。



形式ではなく、心を尽くす。その姿勢を忘れず、日々の茶の湯に生かしていきたいものです。











❚ 次回は・・・

次回の「7-5|六十首~七十九首|07.利休百首」では、茶室の設えや書院飾り、さらには道具の格とその扱い方など、茶会全体を整えるための美意識と心得についての教えを読み解いていきます。


利休が追求した「空間の美」「格の美」とは何か、その本質を探っていきます。












登場人物


  • 千利休|せん・りきゅう

……… 天下三宗匠|千家開祖|抛筌斎|千宗易|1522年―1591年










  

用語解説


  • 手桶水指|ておけみずさし

……… 。


  • 釣瓶水指|つるべみずさし

……… 。


  • 小板|こいた

……… 点前の際、道具を置くための小さな板敷。


  • 大輪|たいわ

……… 天井の回り縁のこと。掛物の釘を打つ基準となる。


  • 喚鐘|かんしょう

……… 客の入退室や合図に用いる小さな鐘。打ち方に作法がある。


  • 月の輪|つきのわ

……… 柄杓の柄と合の接続部。緩みやすく注意を要する。


  • 油柄杓|あぶらひしゃく

……… 柄杓を高く持ち上げて湯を注ぐ様子を指す。避けるべき振る舞いとされる。


  • 古帛紗|こぶくさ

……… 茶碗や茶入などを扱う際に用いる小型の布。拝見時に名物道具を載せるために使う。


  • 外題|げだい

……… 掛物などの巻物に添えられる題名や書名。拝見時の作法に関わる。


  • 羽箒|はぼうき

……… 風炉や炉の灰を整える際に使う道具で、左右の羽の使い分けがある。


  • 行燈|あんどん

……… 茶室を照らす灯具。時刻や趣向によって使い分ける。


  • 短檠|たんけい

……… 。


  • 夜咄|よばなし

……… 暁の茶事:それぞれ夜・早朝に催される茶事。設えや灯りに特色がある。


  • 羽箒|はぼうき

……… 茶室の炉や風炉の灰を整える道具。羽の左右によって陰陽の意味がある。


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