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7-4| 職家の役割 ~三千家を支える職人技~|第7回 茶道の飛躍|江戸時代(前期)|茶道の歴史

全10回 茶道の歴史



茶碗を手にした家元たちが穏やかに着座する様子と、「茶道の歴史 第七回 茶道の飛躍 江戸時代(前期)」と記された掛軸が描かれた、流儀茶道の裏にある職家の支えを象徴する冒頭画像。


第7回 茶道の飛躍 (1/4)

 ― 江戸時代 (1603年―1868年) |前期 ―






❚ 茶道具の美は誰によって支えられてきたのか

茶の湯は、誰が“道具の美”を支えてきたのでしょうか。



利休の時代から続く「好み」を受け継ぎ、手業で時代の茶道を支えてきた職人たち。



今回は、茶道具をつくる「職家」の役割と、その伝統をたどります。

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❚ 利休の審美眼と職人の技


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日本独自の「茶室*」という空間で行われる茶道においては、「季節」や道具の「取り合せ」「作法」が重視されます。



それらがすべて調和するためには、「茶道具」に実用性と美的感性の両面で高い完成度が求めらます。



千利休は、自らの美意識に基づき、独特の風合いを持つ道具を選びました。



たとえば『樂家初代/長次郎*』が焼いた黒樂茶碗や、京釜師『辻与次郎』による釜などは、利休の「わび」の精神を体現する茶道具として知られています。


その後、千家三代/千宗旦もまた、祖父の千利休の茶風を受け継ぐべく、多くの職人に直接指導を行い、「利休好み」の道具が継承されるよう尽力しました。











❚ 御好に応える「千家十職」

和装姿の千家十職の当主が表千家の家元へ挨拶に伺った際の茶席での様子を描いた、茶の歴史や文献の記述を象徴するイメージ画像。

「茶道具」を制作する職人の特徴は、一般的な工芸作家とは異なり、家元の好み(御好)*を忠実に継承し、代々にわたって形・色・技法を伝えていることにあります。


今日では、表千家・裏千家・武者小路千家の三千家それぞれの御家元の好みに応じた道具を製作する職家たちが存在し、その中でも三千家の道具制作を担う十の家が「千家十職*」と呼ばれて活躍しています。


「千家十職」は、茶の湯の発展における“ものづくり”の中核を担う存在であり、各分野の名工たちは今日に至るまで、研鑽を重ねながら伝統の技を守り続けています。











❚ 道具に宿る精神と美意識

茶室の畳の上で、柄杓を使って茶碗に湯を注ぐ亭主の手元と、茶筅や棗などの茶道具が整然と並ぶ所作の一瞬を描いた、茶の歴史や文献の記述を象徴するイメージ画像。

千利休の時代から続く職家たちの手仕事は、今日の茶道文化を静かに支え続けています。



一碗の茶に込められる美と精神を、道具というかたちで表現する職人たちの姿。



次回は、その“道具”の背後にある素材や意匠の意味について掘り下げてまいります。














登場人物


  • 千利休

……… 千家開祖|抛筌斎 千宗易(利休)|1522年-1591年|天下三宗匠|茶道の大成者


  • 辻与次郎

……… 釜師|鋳物師|天下一與次郎|生没年不詳


  • 長次郎

……… 千家十職|茶碗師|樂家初代|生年不詳―1739年


  • 千家三代/千宗旦

……… 千家三代|咄々斎|元伯宗旦|わび宗旦|1578年―1658年―










用語解説



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―ちゃしつ― 茶室は、茶の湯の精神を体現する特別な空間です。簡素で静謐な佇まいの中に、もてなしの心と季節の趣が凝縮されています。にじり口や躙口、床の間など、限られた空間に込められた美意識は、一期一会の茶会に深い余韻を与えます。

長次郎

―ちょうじろう― 生年不詳―1589。樂焼の創始者。千利休の指導のもとに侘茶にふさわしい茶碗を作り出した名陶工。朝鮮系の出自とされ、手捏ねによる独自の造形と黒釉・赤釉の深い味わいが特徴。樂茶碗は茶の湯に革新をもたらし、その精神は樂家により代々継承されている。茶陶の源流を築いた人物である。

御好

―おこのみ― 茶人が好んだ道具や意匠のこと。特に千家の家元の「御好」は、流儀の理念や茶風を体現するものとして職家により再現・継承されている。

千家十職

―せんけじっしょく― 表千家・裏千家の家元に仕える十の職家。茶碗師・釜師・塗師・指物師・表具師など多分野にわたり、家元の「御好」を形にする茶道具の制作を担う。

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商品カテゴリー
茶道具|中古道具市
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