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6-3|一碗に集まる総合芸術 ~利休の創造~|第6回 茶の湯の隆盛|安土桃山時代|茶道の歴史

更新日:9月12日

全10回 茶道の歴史



樂焼の茶碗が並ぶ商家と町衆の集まり、「茶道の歴史 第六回 茶の湯の隆盛 安土桃山時代」と記された掛軸が描かれた、千利休が創出した茶の湯の美意識を象徴する冒頭画像。


第6回 茶の湯の隆盛 (3/3)

 ― 安土桃山時代 (1573年―1603年) ―






❚ 茶の湯は芸術へと昇華する

茶の湯は、どうやって“総合芸術”へと昇華されたのでしょうか。



空間、道具、料理にいたるまで、そのすべてを統一した美学で包んだ人物がいます。



今回は、千利休が生んだ数々のアイデアとその革新性を見ていきましょう。

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❚ 利休による革新の数々

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千利休は、今日の茶道に最も深い影響を与えた人物のひとりですが、茶道史における千利休の活動期間は、実のところごく限られた十数年にすぎません。



その多くは、五十代以降に織田信長、そして豊臣秀吉に仕えていた時期に集中しています。



しかし、この短い期間における千利休の貢献は計り知れず、「建築物」「茶道具」「料理」といった茶の湯を構成するあらゆる要素に革新をもたらしました。



ここでは、その代表的な三例を以下にご紹介します。










❚ 利休の美


■ 建 築 物

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茶の湯を「わび」の精神に徹したもっとも簡略な形へと昇華させるため、茶室の改革に取り組みました。天正十年(1582年)頃には二畳敷きという極小空間の茶室『待庵(現:国宝)*』を建築。 周囲を土壁で囲い茶室の入口に小さな躙口をつけるなど様々な工夫がされ、その工夫は今日の「茶室」にも多く取り入られています。

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■ ​​茶 道 具

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茶道具においても大きな変革をもたらしました。 『樂家初代/長次郎』に指導し、「樂茶碗*」を制作。 また、竹花入や日常道具を茶道具に見立てる「見立道具*」を考案し、それまでの唐物道具中心から、日本の風土に根ざした和物道具中心の茶へと導きました。

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■ ​​料 理

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それまでの数多くの品数を一度に出す「本膳料理」に代わり、簡素で機能的な「一汁三菜*」を基本とする茶懐石を整えました。 これは亭主の心遣いを形にした「もてなし」の表現であり、茶の湯の精神に沿った料理形式として今日まで継承されています。












❚ 茶の湯をプロデュース

千利休の発想は、単なる道具や空間の選択にとどまらず、「体験」そのものをどう構築するかという点において、極めて現代的なプロデュース感覚にあふれたものでした。



空間をしつらえ、道具を選び、もてなしを形にする。



千利休は、茶の湯を単なる作法や儀礼から「総合芸術」へと押し上げた総合プロデューサーでした。



次回は、その精神が受け継がれ、現代にどのように生きているのかを見つめていきましょう。









登場人物


  • 千利休

……… 千家開祖|抛筌斎 千宗易(利休)|1522年-1591年|天下三宗匠|茶道の大成者


  • 織田信長

……… 天下人|武将|1534年―1582年


  • 豊臣秀吉

……… 天下人|武将|関白|太閤|1536年―1598年


  • 樂家初代/長次郎

……… 千家十職|茶碗師|樂家初代|生年不詳―1739年











用語解説



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千利休

―せんのりきゅう― 1522年-1591年。安土桃山時代の茶人で、茶の湯を大成し、茶道の精神と形式を確立した人物です。武野紹鴎に学び、質素・簡素の中に美を見出す「わび」の思想を徹底。侘びた茶室や国産の道具を重んじ、茶を精神修養の道としました。織田信長・豊臣秀吉に仕えながら、茶の湯を武家文化の中核に高めた不世出の茶人です。天下三宗匠の一人。

待庵

―たいあん― 京都・大山崎にある千利休作と伝わる茶室で、現存最古の茶室建築として国宝に指定されている。わずか二畳の空間に利休の侘びの精神が凝縮され、簡素でありながら深い趣を湛える。にじり口や下地窓など、利休好みの意匠が随所に見られ、茶の湯の理念を象徴する建築として高く評価されている。

長次郎

―ちょうじろう― 生年不詳―1589。樂焼の創始者。千利休の指導のもとに侘茶にふさわしい茶碗を作り出した名陶工。朝鮮系の出自とされ、手捏ねによる独自の造形と黒釉・赤釉の深い味わいが特徴。樂茶碗は茶の湯に革新をもたらし、その精神は樂家により代々継承されている。茶陶の源流を築いた人物である。

樂茶碗

―らくちゃわん― 安土桃山時代に長次郎が創始した手づくねによる茶碗で、千利休の侘茶の理念を体現する茶道具。釉薬の深みと手取りの柔らかさが特徴で、黒樂・赤樂が代表的。作行きに侘びの美学が宿り、茶の湯の世界で特別な位置を占める。代々樂家によって受け継がれ、現在も京都で制作が続けられている。

見立道具

―みたてどうぐ― 本来の用途とは異なる道具を、茶の湯にふさわしい趣を見出して茶道具として用いること。千利休をはじめとする茶人たちが、日常の器や異国の品に美を見出し、茶碗・花入・蓋置などに見立てた。形式にとらわれず、趣向や遊び心を反映させることで、茶の湯に独自の風雅と創意をもたらした。

一汁三菜

―いちじゅうさんさい― 日本の伝統的な食事構成で、ご飯に汁物一品、主菜一品、副菜二品を基本とする形式。栄養バランスに優れ、季節の食材を活かす点が特徴。禅宗の精進料理や懐石料理の基礎ともなっており、質素ながらも豊かな味わいと調和を重んじる日本の食文化を象徴している。

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茶道具|中古道具市
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