5-6|禅と茶の道 ~大徳寺に息づく茶の湯~|第5回 茶の湯文化の誕生|室町時代(後期)|茶道の歴史
- ewatanabe1952

- 2023年2月14日
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全10回 茶道の歴史

第5回 茶の湯文化の誕生 (6/6)
― 室町時代 (1336年―1573年) |後期 ―
❚ 茶の湯に宿る“静”の精神
茶の湯の精神は、どこからやってきたのでしょうか。
静けさと型の中に、自らを見つめる時間がある——。
その源には「禅」の教えが深く根づいていました。
今回は、茶の湯と禅、そして『大徳寺』との深いつながりをひもときます。
❚ 珠光から利休へ——禅との交わり

禅僧により日本へもたらされた「茶」はその後さまざまな人物と関わりを経て「禅」と深く結びつき、独自の発展を遂げてきました。
その歴史の中で、特に深い関りを持つ寺院が京都・紫野にある臨済宗の名刹『大徳寺*』でした。
村田珠光は大徳寺の禅僧である一休宗純に参禅し、臨済宗の禅僧『圜悟克勤*』の墨蹟*を与えられ、これを茶会に用いたとされます。
また武野紹鷗は「大林宗套」から『茶禅一味*』という言葉を授かり茶の湯の精神性をより深く探求していきました。
さらに千利休も「笑嶺宗訢」に参禅し、禅の教えを深く学ぶことで「わびの精神」を体得しています。
そして、茶の湯を単なる作法から精神修行へと昇華させていきます。
また千利休の出生地である大阪・堺には『大林宗套』が開いた大徳寺派の寺院『南宗寺*』があり、ここでも多くの禅僧と茶人が交流を重ね、茶の湯がさらに深められていきました。
❚ 墨蹟と“茶禅一味”の精神

禅における修行と同様に、茶の湯もまた知識の習得にとどまらず、「身体・心・実践」の三位一体によって体得するものとされるものであり、両者は精神性という面で共鳴し逢っています。
とりわけ禅僧の書による墨蹟を床の間に掛けることは、茶席の空間に禅の精神を表すもとされました。
千利休もまた以下のように説き、禅と茶の湯の結びつきを示しています。
❝
茶席の掛物は墨蹟がふさわしい
❞
このように茶の湯は『大徳寺』をはじめとする禅の教えと深く関わり合いながら育まれ、今日においてもその精神性は確かに受け継がれています。
❚ 無の境地と現代への示唆
茶の湯が作り出す空間と時間は、俗世を離れた境地を目指すもの。
その精神性は、禅が求める“無”や“悟り”の境地と深く重なっています。
茶の湯と禅が交わることで生まれた静けさと内省の世界——
それは、現代にも通じる心のあり方を私たちに教えてくれるのです。
次回は、千利休の登場とともに確立されていく「わび茶」の完成形、その思想と生き様に迫ります。
登場人物
村田珠光
……… 僧|1423年―1502年|わび茶の祖
一休宗純
……… 大徳寺四十七世住持|1394年―1481年|風狂の僧
圜悟克勤
……… 宋代臨済宗の僧|真覚大師|1063年―1135年|碧巌録の編纂者
武野紹鷗
……… 豪商|茶人|1502年―1555年|利休の師
大林宗套
……… 大徳寺九十世|南宗寺一世|1480年―1568年|南宗寺創建
千利休
……… 千家開祖|抛筌斎 千宗易(利休)|1522年-1591年|天下三宗匠|茶道の大成者
笑嶺宗訢
……… 大徳寺百七世|南宗寺二世|1505年―1583年|聚光院創建
用語解説
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大徳寺
―だいとくじ―
京都市北区紫野に位置する臨済宗大徳寺派の大本山。1315年に大燈国師『宗峰妙超』によって創建。 応仁の乱で一度荒廃しましたが、『一休宗純』によって再興。 境内には20以上の塔頭寺院があり、龍源院、高桐院、大仙院、黄梅院、瑞峯院などが一般公開されています。 特に、三門「金毛閣」は千利休が二階部分を増築したことで知られてる。
圜悟克勤
―えんご・こくごん―
中国宋時代の臨済宗の名僧で、『碧巌録』の編纂者として知られる。語録や公案に優れ、禅の理を鋭く示した。弟子に大慧宗杲がおり、後世の禅風に大きな影響を与えた。語録は今も多くの禅者に愛読されている。
墨蹟
―ぼくせき―
禅僧が筆で書いた書のこと。中国の高僧の墨蹟は、精神性と芸術性を兼ね備えたものとして茶室に掛けられ、茶の湯における精神的支柱のひとつとされる。
茶禅一味
―ちゃぜんいちみ―
茶の湯と禅は本質において同じであるという思想。無駄を削ぎ落とし、静けさと心の統一を求める姿勢が共通していることを表す。
南宗寺
―なんしゅうじ―
大阪府堺市堺区にある臨済宗大徳寺派の寺院。1526年に創建。 戦国時代の武将『三好長慶』が父『三好元長』の菩提を弔うために建立。その後、1617年に現在の場所に再建されました。 本堂(仏殿)、山門(甘露門)、唐門は江戸時代初期に建てられ、いずれも国の重要文化財に指定されています。 また、枯山水庭園は国の名勝に指定されており、『千利休』が修行した場所としても知られています。
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