1-1|はじめてのお稽古|お稽古の基礎知識と茶人の心得|茶道教室|茶道入門ガイド
- ewatanabe1952

- 8月21日
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更新日:13 分前
茶道入門ガイド

■ はじめての茶道 ■
はじめてのお稽古
❚ 目次
❚ 01.はじめてのお稽古
茶道は、長い年月の中で育まれてきた日本を代表する伝統文化のひとつです。作法や所作にとどまらず、美術工芸、建築、懐石料理などが一体となった総合文化であり、精神性と美意識が凝縮された、世界に誇る日本文化といえるでしょう。
茶道のお稽古を始めることは、こうした日本文化の奥深さに触れながら、礼儀作法や美しい立ち居振る舞いを身につける貴重な機会でもあります。茶室で過ごすひとときは、日常の喧騒から離れ、心を静め、自分自身と向き合う豊かな時間をもたらしてくれます。
一方で、茶道に興味を持っても、身近に経験者がいない場合には、「どこで習えばよいのか」「どの流派を選べばよいのか」「費用はどのくらいかかるのか」「事前に何を準備すればよいのか」など、さまざまな疑問や不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
茶道のお稽古では、茶室での立ち居振る舞いや道具の扱い方、基本的な作法から点前までを、師の指導のもとで一つひとつ実践しながら学んでいきます。それは単なる技術習得にとどまらず、日本文化の精神や「もてなしの心」を体得していく時間でもあります。
これから茶道のお稽古を始める方が安心して第一歩を踏み出せるよう、「流派」「稽古場」「費用」「持ち物」「服装」「資格」など、はじめての方が知っておきたい基本的な情報をわかりやすくご紹介していきます。
❚ 02.はじめてのお稽古 ―流派を決める―
茶道にはさまざまな流派があり、それぞれに成り立ちや理念、作法の特徴があります。
流派ごとに点前の手順や道具の扱い方、精神的な教え、茶室の設えなどに違いはありますが、いずれの流派においても茶道の根幹である「もてなしの心」や「一期一会」の精神は共通しています。
茶道を始めるにあたっては、どの流派を学ぶかを考えることも大切ですが、それ以上に「無理なく通い続けられる環境」であるかどうかを重視することが重要です。ご家族や知人が茶道を学んでいる場合は、その流派を選ぶことで相談しやすく、学びも深まりやすくなります。また、教室の立地や雰囲気、先生との相性も、長くお稽古を続けるうえで欠かせない要素です。
ここでは、はじめて茶道を学ぶ方が流派を選ぶ際に意識しておきたいポイントを、項目ごとにご紹介します。
1. 学びたい目的を考える
茶道を学ぶ理由は人それぞれです。 「日本文化に触れたい」「礼儀作法を身につけたい」「趣味として楽しみたい」「将来の仕事や指導に活かしたい」など、まずは自分が何を求めて茶道を始めるのかを整理してみましょう。 目的を明確にしておくことで、先生の指導方針や教室の雰囲気が自分に合っているかを判断しやすくなります。
2. お稽古の環境を重視する
流派そのものよりも、お稽古の環境は非常に重要です。 教室が通いやすい場所にあるか、無理なく続けられる頻度で通えるか、先生との相性はどうかなど、実際に通うことを想定して確認しましょう。 流派の違い以上に、師との相性や学びやすさが、茶道を長く続けるための大きな要因となります。
3. 身近な人の勧めを参考にする
家族や知人に茶道を学んでいる方がいれば、その流派を選ぶと学びやすくなります。 同じ流派であれば、茶会に一緒に参加しやすくなったり、道具を共有できたり、情報交換がしやすかったりといった利点もあります。
4. 主要な流派を知る
茶道には多くの流派がありますが、特に有名なものとして「表千家」「裏千家」「武者小路千家」の三千家が広く知られています。 さらに遠州流、江戸千家、石州流など、さまざまな流派が存在し、それぞれ独自の理念や作法の特徴を持っています。 流派選びの際は、各流派の公式ホームページや資料を確認し、その成り立ちや理念、特徴を理解することが大切です。 自身の目的や学びたい内容に合った流派を選ぶことで、より充実した茶道の学びが得られるでしょう。
5. 体験教室を受けてみる
多くの茶道教室では体験教室や見学を受け付けています。 実際に参加してみることで、流派ごとの違いや先生との相性を感じ取ることができます。 気になる流派があれば、体験を申し込んでみるのもよい方法です。 また近くに教室がない場合やどこで学べるかあるかわからない場合は各流派に直接を問い合わせると最寄りの教室を紹介してもらえますので気軽に問い合わせてみると、自分に合った学びの場を見つけやすくなります。
上記のように述べても、はじめての方にとっては不安に感じるかもしれません。
一度入門した流派は基本的に途中で変えることはありませんので、自身が納得のいく先生と流派に出会うまで、さまざまな流派の体験教室に参加してみることをおすすめします。
どの流派を選んでも、茶道の精神や基本的な所作は共通しており、大切なのは無理なく長く続けられる環境と生涯の師を見つけることです。師や稽古場の雰囲気が自分に合うかどうかを見極めることも重要なポイントとなります。
ただし、茶道に限らず、流儀が確立されているすべての日本文化においては、師弟関係が重んじられます。そのため、一度学び始めた流派を途中で変えることは礼を欠く行為とみなされる場合があり、変更後の先生によっては入門をお断りされることもあります。流派を決める際には慎重に選び、長く学び続けられる環境を整えることが大切です。
❚ 03.はじめてのお稽古 ―資格―
茶道のお稽古を続けていく中で、「資格」や「免状(許状)」について気になる方も多いのではないでしょうか。
茶道における資格は、一定の修練を積んだ証として師より許しを受けるものであり、技量や理解の段階を示す一つの目安となります。ただし、資格の取得は義務ではなく、趣味として茶道を楽しむ場合には必ずしも必要なものではありません。
資格の種類や取得の流れ、費用の考え方などは、流派や師事する先生によって大きく異なります。そのため、正確な情報を理解することが大切です。
茶道の資格についてのは、下記の専用ページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

❚ 04.はじめてのお稽古 ―さまざまな稽古場―
茶道を学ぶにあたり、どの稽古場や教室を選ぶか は、その後の学びを大きく左右する重要なポイントです。
茶道における先生との出会いは「ご縁」とされ、一度通い始めると、簡単に流派や稽古場を替えることは難しくなります。そのため、流派の違いだけでなく、先生の人柄や稽古場の雰囲気が自分に合っているか を慎重に見極めることが大切です。
今日では茶道を習うには、大きく分けて以下の2つの選択肢があります。
それぞれの特徴と違いを理解し、自分の目的やライフスタイルに合った学び方を選びましょう。
1.個人の先生について学ぶ方法|茶道教室
本格的に茶道を学びたい方や、将来的に上級の点前や講師資格(免状)の取得を目指す方には、個人の先生が主宰する茶道教室がおすすめです。 個人教室では、流派ごとの伝統や作法を大切にしながら、師弟関係を重んじた丁寧な指導を受けることができます。 点前の技術だけでなく、茶道の精神性や所作の意味をじっくり学べる点が大きな魅力で、本格的に茶道の世界に触れたい方にとって長く学び続けやすい環境といえるでしょう。 また、個人の先生の教室には以下のような特徴があります。 ・お稽古茶会やお稽古茶事が定期的に開催され、実践を通して学ぶ機会が多い ・先生同士のつながりから、他の先生主催の茶会に招かれることがある ・先生所蔵の茶道具が充実しており、名品に触れる機会が多く、道具の扱い方や見方、美意識を自然に身につけられる
2.カルチャースクールで学ぶ方法
より気軽に茶道を始めたい方や短期間だけ茶道に触れてみたい方は、まずは自治体や企業が運営するカルチャースクールや公共講座などの教室に通うのもよい選択肢です。 初心者向けに構成された講座が多く、基礎から分かりやすく学ぶことができます。 回数制や期間限定のコースもあるため、ライフスタイルに合わせて参加しやすいのが特徴です。 茶道の世界を知り、興味が深まったら個人の先生の教室へ移行するという方法もあります。カルチャースクールは、「茶道に興味はあるが、いきなり入門するのは不安」「短期間で日本文化に触れてみたい」方に適しています。 まずは敷居の低りカルチャーセンターなどで茶道の魅力を知り、さらに深く学びたいと感じた段階で、個人の先生の教室へ移行する方も多くいます。
流派に特にこだわりがない場合は、先生との相性やお稽古場の雰囲気が合うかどうかも重視するとよいでしょう。ご家族や知人に茶道を習っている方がいれば、その方の紹介で見学に行ってみるのもおすすめです。
一方、習いたい流派が決まっている方で近くに教室がない場合や、どこで学べるかが分からない場合は、各流派に直接問い合わせることで、最寄りの教室を紹介してもらえることがあります。 気軽に問い合わせてみると、自分に合った学びの場を見つけやすくなります。
茶道は、一度入門すると生涯修行となり、師弟の関係も生涯続くものです。
どのような環境で学ぶかを慎重に考え、自分にとって無理なく学び続けられる教室を選ぶことが何より大切です。 まずは体験教室に参加したり、見学をしたりして、自分に合った学びの場を見つけましょう。
❚ 05.はじめてのお稽古 ―費用―
茶道を始めるにあたり、多くの方が気になるのが お稽古にかかる費用 ではないでしょうか。
茶道のお稽古費用は、流派・教室・学ぶ内容・地域などによって異なりますが、あらかじめ 費用の内訳や目安を知っておくことで、安心して学び始めることができます。
ここでは、一般的なお稽古場に入門する際に必要となる費用の一例をご紹介します。
入会金
費用の目安:0円~15,000円程度。 教室によっては、入会金が必要な場合があます。 相場は10,000円程度が一般的と考えられます。 また流派によっては流派への登録料が必要となる場合がありますので事前に確認が必要です。
月謝
費用の目安:10,000~15,000円程度 月額は毎月のお稽古にかかる基本的な費用となります。 一般的な教室の例として「月3~4回/10,000~15,000円」が相場とされています。 またカルチャースクールなどは都度の回数券制(1回3,000円~5,000円)や体験コースがあり、より手軽に始めることができます。
年会費
学ぶ教室により茶道具や茶室の維持費などとして年会費が必要な場合もありますが多くの教室では必須ではありません。 ただし流派によっては流派への登録料として年会費が必要となる場合がありますので、こちらも事前に確認が必要です。
水屋代
水屋代とはお稽古の際に実際に用いる「抹茶」「お菓子」「炭」などの消耗品にかかる費用です。 各稽古場により月謝に含まれている場合と月謝とは別に納める場合がありますので事前にお稽古場にご確認ください。
携行品
茶道のお稽古を始める際には、各自で使用する基本的な携行品 揃える必要があります。 以下は、その一例です。 ・扇子:1,000円~3,000円 ・帛紗:3,000円~10,000円 ・懐紙:500円~1,000円 ・楊枝:500円~1,500円 ・帛紗挟み:3,000円~8,000円 ・数寄屋袋:5,000円~10,000円 ・足袋:1,000円 etc 必要なものがすべて一通り揃った入門セットは5,000円~10,000円程度で揃えることが可能です。 これらの携行品については教室によっては先生がご準備くださる場合と自身で準備する場合がありますので事前にご確認ください。
許状(免状)申請
お稽古を続けていく上で資格を取得したいと思う方もおられると思います。 茶道の資格については「免状」や「許状」といわれ、師事する先生の許しを頂き申請をすると授与されます。 申請時にはそれぞれの「流派に納める費用」と「先生への謝礼」が必要となり、金額は流派や稽古場によって異なります。 なお免状の取得は必須ではなく、趣味として学ぶ場合は所得しなくても問題ありません。
お稽古茶会|お稽古茶事
茶道は四季を大変を重んじるために年間ではさまざまな行事がおこなわれています。 新年を祝う「初釜」や茶道のお正月といわれる「炉開き」などの特別なお稽古茶会やお稽古茶事などが行われる場合があります。 こうした行事には月謝とは別に実費費用がかかることがありますので事前に確認しておくこと安心です。
お茶会|お茶事
茶道の修練を続けていくとさまざまなお茶会やお茶事に招かれる機会も増えてきます。 その規模や開催される場所などで変わりますが大寄せの茶会で10,000円~15,000円、料亭などで行われる正式な茶事に招かれた場合は30,000円~50,000円程度の費用が一般的です。 こうした茶会への参加は学びを深める貴重な機会となりますが、当然のことながら強制ではありません。
はじめて茶道を習う際には、「月謝」と最低限の「携行品」があれば問題なく学ぶことができます。
長く続けるうちに、お気に入りの茶道具を揃えたくなるかもしれませんが、初心者のうちは先生に相談しながら、必要なものを徐々に揃えていくのがおすすめです。
また、茶道の学びは一生続くものであり、修練を積むことで自然と茶会や茶事に参加する機会も増えていきます。茶会の参加費用などはかかりますが、幻想的な茶室で行われる茶会や茶事は日常から離れた素晴らしい体験となりますので無理なく続けられる範囲で参加することも大切です。
❚ 06.はじめてのお稽古 ―持物―
はじめて茶道のお稽古に通う際、「何を持って行けばよいのか」と迷われる方は多いでしょう。お稽古に必要な持物は、茶会や茶事ほど多くありませんが、基本の道具をきちんと準備しておくことは、先生やお稽古場への礼を示し、学びをスムーズに進めるうえでとても大切 です。
茶道のお稽古では、帛紗ばさみや扇子、懐紙など、点前や作法を学ぶための基本道具を使用します。最初は最低限のものだけでも十分ですが、稽古を重ねるにつれて、自分の扱いやすい道具を揃えていく楽しみも生まれてきます。
また、流派やお稽古場によって必要な持物が異なる場合があるため、初回は先生に確認しておくと安心です。
持物の種類や選び方、用途などの詳細については、下記の専用ページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

❚ 07.はじめてのお稽古 ―服装―
はじめて茶道のお稽古に通う際、「どのような服装で行けばよいのか」と迷われる方は多いのではないでしょうか。お稽古は茶会ほど格式ばった場ではありませんが、清潔感と動きやすさを兼ね備えた装いを選ぶことは、礼を尽くすうえでとても大切です。
茶道では、正座や立ち座り、道具を扱う動作が多いため、動きやすく、作法の邪魔にならない服装が基本となります。また、周囲の方や道具に触れる機会もあるため、大きな装飾や香りの強いものを避ける などの配慮も必要です。
お稽古にふさわしい服装の基本や、季節ごとのポイント、身だしなみの注意点などについては、下記の専用ページでわかりやすく解説していますので、あわせてご参照ください。

❚ 08.はじめてのお稽古 ―FAQ―
はじめて茶道のお稽古をはじめるにあたり、「何を準備すればよい?」「はじめてでも大丈夫かな」など、さまざまな不安や疑問が生まれるものです。
茶道は一生学び続ける奥深い世界ですが、最初は誰もが初心者です。
ここでは、はじめてのお稽古に関して特に多い質問をまとめましたので参考としてお役立てください。
Q.何歳から茶道をはじめることができますか?大人になってからもはじめられますか?
A. 年齢制限はありません。 子どもから大人まで幅広い年代の方が学んでおり、流派によっては子ども向けの教室もあります。 大人になってからはじめる方も多く、年齢に関係なく自分のペースで学べるのが茶道の魅力です。
Q.全くの初心者ですが、ついていけますか?
A.大丈夫です。茶道の世界では初心者は大歓迎です。 多くの方は事前知識はなく、茶道に興味を持たれてからはじめられています。 茶道では「生涯修行」の世界です。ゆっくりと自身のペースで学ぶことが大事です。 不安がある場合は、体験稽古に参加して雰囲気だけでも感じてからはじめるのもおすすめです。
Q.男性でも茶道を習うことはできますか?
A.もちろん可能です。 茶道は男女問わず学ぶことができ、もともとは男性が中心となって発展してきた文化でもあります。 近年では、ビジネスマナー、精神修養、日本文化への関心など、さまざまな目的で男性の入門者が増えています。 特に、日本文化に関わる職業(料理人、陶芸家、茶舗、和菓子職人、織物業、茶道具商など)の方は、職業の延長線上で茶道を学ぶことが多くあります。
Q.左利きなのですが、点前を習う際に影響はありますか?
A. 問題ありませんが、点前は右手主体になります。 茶道の作法は右手を基本としているため、左利きの方も右手で点前を行います。 練習を重ねることで自然と慣れていくため、心配する必要はありません。 今日においてもたくさんの左利きの方が学んでおられます。
Q.途中で流派を変えることはできますか?
A. 可能ですが、一般的には推奨されません。 流派によって作法や道具の扱いが異なるため、変更すると学び直しが必要になることがあります。 変更を検討する場合は、まず現在の先生に相談されることをおすすめします。
Q.茶道の道具は最初から高価なものを揃えたほうがよいですか?
A. いいえ、必要ありません。 初心者のうちは自身の最低限の持ち物(懐中道具)だけで十分です。 高価な茶道具は、経験を積み、自分の好みや方向性が定まってきた段階で少しずつ揃えていくのがおすすめです。
Q.茶道のお稽古を長く続けるコツはありますか?
A.無理せず、自分のペースで続けることが一番です。 先生やお稽古仲間との交流を大切にし、茶会や茶事に積極的に参加することで、楽しみながら学ぶことが重要です。 茶道は一生を通じて学ぶものなので、焦らずじっくり取り組みましょう。
Q.茶道の稽古は何年続ければ一人前になれますか?
A.茶道に明確な「一人前」という基準はありません。 茶道を学ぶのに終わりはなく、生涯修行です。 基本の点前は数か月~1年程度で覚えることができますが、より高度な点前や茶道の精神を深く理解するには、長い年月をかけて修練を積むことが必要です。
Q.お茶会や茶事には必ず参加しなければなりませんか?
A.必須ではありません お稽古を続けていると、先生やお稽古場からお茶会や茶事の案内を受けることがありますが、必ず参加しなければならないわけではありません。 ただし、実際の茶席を経験することで茶道の理解が深まるため、無理のない範囲で参加することをおすすめします。
Q.お稽古を休む場合、どのように連絡すればよいですか?
A.できるだけ早めに先生へ連絡してください。 お稽古を休む場合は、できるだけ早めに先生に連絡しましょう。 茶道は礼儀を重んじる世界なので、無断で休むのは避けるべきです。 教室によっては、振替のお稽古が可能な場合もありますので、事前に確認しておくと安心です。
