2-1|はじめての茶会|茶会の基礎知識と客人の心得|はじめての茶道|茶道入門ガイド
- ewatanabe1952

- 8月17日
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更新日:19 時間前
茶道入門ガイド

■ はじめての茶道 ■
はじめての茶会
❚ 目次
❚ 01.はじめての茶会
茶道は、長い歴史のなかで作法・美術工芸・建築・懐石などが融合して築かれた、日本を代表する総合文化です。その精神は茶会という場に最もよく表れ、亭主のもてなしと客の受け取りによって成立します。
お稽古を続けていると、学びの成果を実際の場で体験する機会として「茶会」に招かれることがあります。また、茶道を習っていない方でも、仕事上のご縁や知人からの招きで茶会に参加する機会が訪れることがあります。
その際には、「茶事とは何が違うのか」「服装や持物はどうすべきか」「作法がわからない」など、不安に感じる点が多いかもしれません。
しかし、茶道では完璧な所作よりも、亭主のおもてなしの心を尊重し、感謝して臨むことが何より大切です。基本的なマナーを押さえておけば、初心者や初めての方でも安心して茶席を楽しむことができます。
❚ 02.はじめての茶会 ―茶事と茶会の違い―
茶会は、茶道をより気軽に体験できる場として広く親しまれています。特に「大寄せ茶会」などでは、薄茶と菓子(主菓子または干菓子)をいただく簡略な形式が一般的で、初心者でも参加しやすいのが特徴です。
一方で、懐石・濃茶・薄茶を中心に構成される正式な茶の湯である茶事は、亭主が少人数の客をもてなす本格的な場であり、所要時間や内容も茶会とは大きく異なります。
同じ「お茶の席」でも、茶会と茶事では目的や内容、所要時間、参加人数などが大きく異なります。
ここでは、初めての方にも分かりやすいように、両者の主な違いをまとめてご紹介します。
■ 概要 ■
茶事 | 茶会 | |
席数 (1日) | 1席 | 茶会:1席 大寄茶会:2~5席 |
客人 | 1人~5人 | 10人~50人 |
時間 | 約4時間 | 1席:30分程度 |
■ 構成要素 ■
茶事 | 茶会 | |
前礼 (前日) | ○ | |
受付 | ○ | |
待合・席入り | ○ | ○ |
炭点前 (初炭) | ○ | |
茶事懐石 | ○ | |
点心 | △ | |
主菓子 | ○ | ○ |
中立 | ○ | |
濃茶 | ○ | △ |
炭点前 (後炭) | ○ | |
干菓子 | ○ | ○ |
薄茶 | ○ | ○ |
退席 | ○ | ○ |
後礼 (後日) | ○ |
※点心………茶事懐石を簡略化したもの=お弁当など
※濃茶………大寄席の茶会などでは薄茶のみの場合があります
❚ 03.はじめてのお茶会 ―さまざまな茶会―
現代の茶会には、初心者でも参加しやすいものから、伝統的な作法に基づく格式高いものまで、さまざまな形式があります。時代とともに茶会の形は多様化し、今日では「大寄せ茶会」や「呈茶席」のように、多くの人が気軽に参加できる茶会が広く親しまれています。
また、一般の茶会とは異なり各流派の御家元による「献茶式」のような、特別な奉納茶会も存在します。
ここでは、代表的な茶会の形式をご紹介します。
大寄せ茶会
読み:おおよせちゃかい 大寄せ茶会とは、一度に多くの客人が参加できる茶会のことで、初心者でも参加しやすい現在主流の茶会形式です。複数の茶席を巡りながら、さまざまな趣向や流派の茶を楽しむことがで、茶道の雰囲気を気軽に味わえる点が魅力です。 ・多数の茶席が設けられる大規模な茶会 ・主催は自治体、茶道団体、寺社、文化施設など多岐にわたる ・同一流派だけでなく、異なる流派が釜を掛ける席もある ・基本は薄茶席だが、趣向により濃茶席が設けられる場合もある ・茶事懐石を簡略化した点心(弁当)が提供されることもある
呈茶席
読み:ていちゃせき 呈茶席は、場所や正式な作法にとらわれず、多くの人に気軽に抹茶を楽しんでもらうことを目的とした、よりカジュアルな茶会形式です。 茶道の入口としてとても参加しやすく、幅広い人に親しまれています。 ・主に展示会・デパート、寺社、観光地、公共施設などで開催 ・立礼棚を使った「立礼式」が中心(椅子、テーブル使用) ・正座不要で、茶道未経験者でも参加しやすい ・通りがかりの人でも気軽に抹茶を味わえる ・日本文化の体験イベントとして広く定着
献茶式
読み:けんちゃしき 献茶式とは、神仏や祖先に茶を供え、祈りや感謝の心を捧げる目的で行われる厳粛な茶会で一般の茶会とは異なり、主客の交流ではなく「奉納」が中心となります。 神社・仏閣・文化行事などで執り行われ、各流派の御家元や著名な茶人が奉仕することが多い。 献茶式は儀式的な要素が強く、参列者は拝観・見学が中心となります。 また今日では献茶式に付随する形で大寄せ茶会と同じように複数の茶席が設けられることが主流となっています。
今日の茶会は、多様なスタイルが共存し、多くの人が気軽に茶道に触れられる場が広がっています。
茶道の伝統を守りつつ、新しい形でおもてなしの心を伝えるこれらの茶会は、日本文化を広める重要な役割を果たしています。
格式ある茶会からカジュアルなものまで、それぞれの目的や場面に応じて楽しむことで、茶道の魅力をより深く感じることができるでしょう。
しかし、誰もが参加しやすい茶会が増えたからこそ、主催者や亭主の趣向を理解し、感謝の気持ちを持って参加することが大切です。最低限の知識やマナーを心得ておくことで、より心地よく茶の湯の世界を味わうことができます。
一服の茶に込められた心を感じながら、茶会の時間をぜひお楽しみください。
❚ 04.はじめてのお茶会 ―茶会の流れ―
はじめて茶会に参加する際、どのように進行するのか分からず不安に感じる方も多いかもしれません。茶会の形式によって細かい流れは異なりますが、基本的な進行は共通しており、大きく分けると以下のような流れになります。
ここでは、一般的な「大寄せ茶会」でのおおまかな流れの一例をご紹介
■ 大寄せ茶会の流れ ■
受付→待合→席入→主菓子や干菓子→薄茶(or濃茶)→拝見→退席
次席へ向かう
以下では、「大寄せ茶会」の基本的な流れを、はじめての方にも分かりやすいよう、各段階の意味と所作を交えて紹介します。
あくまでも一例であり、その所作や意味については確定するものではありません。
一、受付
受付で名前を記帳し、必要に応じて芳名帳へ丁寧に書き入れます。 荷物は茶席へ持ち込めませんので、足袋( 靴下) を新しいものに履きかえ、時計・アクセサリーを外して身支度を整えましょう。 多くの茶会では荷物預かり所が設けられているのでバッグや上着など、茶席で不要なものは風呂敷でまとめて預けると安心です。 受付で席入りの番号札が配られる場合もあるため、失くさないよう大切に持ちましょう。 茶席に入れる人数には限りがあるため、時間厳守で行動します。
二、待合
席入りの人数に合わせ、順番が来るまで待合で待機します。 待合では座る位置に決まりはありませんので、落ち着いて過ごしてください。 待合の床には掛物が掛けられていることが多いため、この時間に掛物を拝見します。 また、その日の道具立てをまとめた茶会記や、道具の箱書きが置かれている場合もあり、あわせて目を通すとこれからはじまる一席がより楽しめます。
三、席入り
順番になると案内に従って席入りします。 入り口では扇子を膝前に置き、一礼してから入室します。 初心者の方は、経験者に先に入ってもらうと動きが分かりやすく安心です。 席に入ったらまず床前へ進み、掛物・花・花入・香合を拝見し、その後、点前座の道具を拝見してから席につきます。 参加人数が多い場合は、数名ずつ床を拝見することもあります。 席に着いたら、扇子を後ろに置き、帛紗ばさみは脇か後ろに置きます。 全員が着席すると、お菓子が運ばれますので懐紙を取り出し自分の分を取ったら、次の方に回し、静かにいただきましょう。
■ 注意事項 ■
座る位置については、正客(1番目)、次客(2番目)、末客(最後)は茶道の熟練者が座る場所となりますので初心者の方は中ほどを選びます。番号順にその席があてがわれた際は必ず初心者であることを告げ熟練者と変わることが重要です。
四、点前
亭主が入室し正客と挨拶をかわすと点前が始まります。 大寄席茶会では一度の席入りの人数が多いため、正客、次客以外は水屋からの点て出しになることが一般的です。 茶が運ばれてきたら隣の客人(次の客人)に「お先に」と軽く会釈し一服をいただきます。 飲み終えたら、飲み口を軽くふき、茶碗を拝見します。給仕が茶碗を回収しに来た際は「結構なお点前です」「おいしかったです」などの御礼を述べ茶碗を返しましょう。
五、道具拝見
すべての来席者に茶が供され終わると正客が代表してこの茶会に用いた茶碗や茶杓、棗などの道具を拝見し、亭主と問答をします。 大寄せ茶会では来席者が多いため、亭主と正客の話が終わると、点前座に道具が飾り置かれるので退席前に拝見します。 高価な道具が用いられることも多いため、初心者の方は道具に触れることは避けましょう。
六、退席
亭主の退室時に客人全員で一礼をし、会が締めくくられます。 連客(左右の客人)に同席した感謝を込め軽くあいさつを交わし、道具を拝見してから静かに退席しましょう。
次席へ向かう
複数の茶席が設けられている場合は、案内に従って次の席へ向かいます。 すべての席を回り終え、荷物を受け取ったら大寄せ茶会の終了です。
■ 茶会記 ■
茶会記とは、茶会や茶事の内容を詳細に記録した文書のことです。
日時・場所・席主(亭主)・参加者名をはじめ、床の間のしつらえ(掛物・花入・香合など)、使用された茶道具(茶碗・水指・釜・棗・茶杓など)、さらに懐石の献立や菓子にいたるまで、茶会の構成要素が細かく書き留められています。
これらは「会記」とも呼ばれ、茶会の「自会記(亭主が記録)」と「他会記(客が記録)」の二種類が存在します。
これらは単なるメモ書きではなく、当日の趣向や道具組、季節感、亭主の意図が表れた、茶道文化を理解するための重要な資料です。
そのため、茶会記は茶道史・美術工芸史の研究においても非常に価値が高く、歴史的な茶会の様子を今に伝える貴重な記録として大切に扱われています。
❚ 05.はじめてのお茶会 ―費用―
はじめて茶会に参加する際、どのくらいの費用が必要なのか気になる方も多いのではないでしょうか。
茶会の費用は、茶会の形式・規模・開催場所・提供されるお茶や点心の内容などによって大きく変わります。
ここでは、一般的に参加しやすい大寄せ茶会と呈茶席について、費用の目安をご紹介します。
大寄せ茶会
費用の目安:10,000円~15,000円程度。 ※点心(お弁当)が付く場合が多く、茶席数などによって価格が変動します。 大寄せ茶会は、流派を問わず多くの参加者が集まる茶会で、自治体や茶道団体などが主催することが多い形式です。 一般的に大寄茶会の場合は2~5席+点心席が設けられておりとなり、複数の席を巡ることで多様な点前や茶道具、流派の違いを味わえるのが魅力です。 その反面、一席あたり20~30人など参加人数が多いため、「亭主との距離が遠く感じられる」、「点前や道具がじっくり見られない」といった点は事前に理解しておく必要があります。
呈茶席
費用の目安:無料~2,000円程度 呈茶席は、展示会や百貨店、寺社、公共施設、観光地などで設けられる、もっとも気軽な茶会形式です。 一般的な呈茶席は立礼棚を用いた立礼式で、薄茶と干菓子が提供され、茶道の作法を知らない方でも気軽に体験できます。 また展示会や観光地などでは来訪に感謝を現し、無料で振舞われる場合もあります。
茶会の費用は、茶席の数や点心の有無、開催規模によって幅がありますが、まずは参加しやすい呈茶席から体験し、慣れてきたら大寄せ茶会に足を運んでみるのも良いでしょう。
費用の違いを理解しながら、自分に合った茶会を選んでみてください。
■水屋見舞い■
水屋見舞いとは、茶会に招かれた際、亭主への感謝とお茶会の準備に携わる人々の労をねぎらう気持ちを込めて贈る心付けのことです。
茶会では、席主(亭主)だけでなく、水屋で裏方として働く人々が多くの準備を行うため、その慰労や費用の一部を助け合う「相互扶助」の意味も含まれています。
ただし、水屋見舞いは必ずしも参加者全員が持参するものではありません。
茶道教室や社中として招かれた場合、代表者のみが持参することも多く、個人で参加する茶会では特に不要です。
状況や招待の仕方によって判断されるため、迷う場合は先生や経験者に相談すると安心です。
贈り物には、個包装で分けやすく、日持ちするお菓子が適しています。また当日水屋で食べる場合もあるのであまりボロボロとこぼれるような御菓子は避ける方が良いでしょう。
品物には紅白蝶結びの水引をかけ、表書きは「御水屋見舞」または「水屋御見舞」と記します。
水屋見舞いは、席に入る前に受付に預けるか、水屋へ直接届けるのが一般的です。
直接手渡す場合は、扇子や懐紙を一枚敷き、その上に品物をのせて差し出すと丁寧な所作となります。
❚ 06.はじめての茶会 ―持物―
はじめて茶会に参加する際には、場の雰囲気や礼法にふさわしい持物を準備しておくことが大切です。
茶会で必要な道具を整えることは、亭主への敬意を示すとともに、茶席での所作をスムーズにし、茶道の時間を心地よく過ごすための基本となります。
茶会で必要とされる持物は、茶事ほど多くはありませんが、「何を持っていけば良いのか」、「どの程度の準備が必要なのか」と不安に感じる方も少なくありません。
茶会の種類によって必要な持物が異なる場合もあるため、基本的なものを知っておくと安心です。
持物の種類や選び方、用途などの詳細については、下記の専用ページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

❚ 07.はじめての茶会 ―服装―
はじめて茶会に参加する際の服装は、亭主や会場への敬意を示し、茶席の雰囲気を乱さずに過ごすための大切な要素です。格式や季節、会場の雰囲気によってふさわしい装いが異なるため、何を着て行くべきか迷われる方も多いかもしれません。
茶会では、華美になり過ぎず、落ち着きのある服装を選ぶことが基本ですが、季節や茶席の種類の内容によって注意すべき点が変わる場合もあります。
服装の基本、選び方、身だしなみの要点などについては、下記の専用ページにてわかりやすく解説していますので、あわせてご参照ください。

❚ 08.はじめてのお茶会 ―FAQ―
はじめて茶会に参加する際には、「作法は大丈夫?」「何を準備すればよい?」など、さまざまな不安や疑問が生まれるものです。
ここでは、はじめての茶会に関して特に多い質問をまとめましたので参考としてお役立てください。
Q. 茶道の知識がなくても参加できますか?
A. はい、参加できます。 最近では初心者向けのカジュアルな茶会や、気軽に参加できる呈茶席も多く開催されています。 事前に 最低限のマナー(挨拶の仕方、茶碗の扱い方など)と、必要な持ち物を確認しておけば、より安心して楽しめます。
Q. 流派の違う茶会に参加できますか?
A. ほとんどの茶会で流派を問わず参加できます。 茶会では流派が混在していることが多く、特に大寄せ茶会ではさまざまな点前を体験できる貴重な機会です。 作法が自分の流派と異なる場合でも、相手の流儀を尊重し、静かに周囲に合わせることが大切です。
Q. 茶会に遅刻してしまった場合、どうすればよいですか?
A. 茶会では基本的に遅刻は厳禁です。 やむを得ず遅れる場合は以下を参考にしてください。 正式な茶会の場合は途中入室が難しいため、受付や案内の方に事情を伝え、指示に従ってください。 大寄せ茶会、呈茶席の場合は遅れても入退場可能な場合がありますので案内の方に従い、静かに着席しましょう。
Q. 正座が苦手ですが、茶会に参加できますか?
A. 参加できます。無理は禁物です。 正座補助具(正座椅子など)を活用すると楽になります。 痺れることは恥ずかしいことではありません。 無理に立ち上がると転倒の危険があるため、ゆっくり調整してください。 多くの場合、正座が困難な方は、主催者に伝えると茶室用の椅子を用意してくれる場合があります。 近年は立礼式(椅子席)の茶席も増えているため、そうした茶会を選ぶのも一つの方法です。
Q.追加で費用がかかることはありますか?
A.茶会の途中で追加費用が発生することはありません。 ただし、事前申し込み制の茶会などでは参加費の支払い方法やキャンセル料に注意してください。

