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1-9|抹茶|抹茶とは|濃茶と薄茶の違いと役割|茶道の基礎知識

更新日:5 日前

茶道入門ガイド



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■ 茶道の基礎知識 ■

抹茶






❚ 目次

❚ 01.抹茶とは

抹茶とは、茶葉を細かく挽いた日本独自の粉末茶であり、茶道にて提供される一碗の基となるものです。茶道においては単なる飲み物ではなく、茶の湯の精神を象徴する存在として重んじられています。



その鮮やかな緑の色合い、繊細な香り、そして点てる所作の美しさは、日本の文化と美意識が凝縮されたものです。茶室の静寂の中で点てられる一服の抹茶は、単なる嗜好品ではなく、日常から離れた特別なひとときを演出し、亭主と客との心の交流を深めるものです。この一服には、精神性を伴う茶の湯の趣が凝縮されています。



茶道で客人をもてなす一碗(抹茶)には「濃茶」と「薄茶」の二種類があり、それぞれ異なる点前や作法が存在しどちらも茶道におけるもてなしの心を表す大切な一碗となります。



抹茶は長い歴史と丁寧な製法を経て生まれ、日本文化の象徴的な飲み物です。栽培・製造・点前のすべてに人の手と心が込められており、一服の抹茶には季節やもてなしの心が凝縮されています。

茶葉から抹茶へと至る過程を知ることで、一碗の奥深さを一層感じられ、茶道の魅力をより深く味わうことができます。











❚ 02.濃茶と薄茶の違い

前項にて述べたように抹茶には「濃茶」と「薄茶」の二種類があり、茶道や抹茶と聞いて思い浮かべるのは「薄茶」を指すことがほとんどです。


 

しかし、製茶方法において濃茶と薄茶に明確な違いはなく、収穫された茶葉の中から、苦みや渋みが少なく、特に品質の高いものが「濃茶」として選別され、それ以外のものが「薄茶」として用いられます。そのため、市販されている濃茶用の抹茶も、薄茶として点てることが可能です。


濃茶

濃茶は、1人または2~5人で一碗を回し飲みをする形式がとられます。 抹茶を多く使い、とろりとした濃厚な味わいが特徴です。濃茶の点前では、客人数分の抹茶を一つの茶碗に練り上げ、全員で回し飲みします。 これは、亭主が一つの茶碗に心を込めて点てた一服を、客人同士が分かち合いながらいただくことで、茶の湯の精神を共有するという意味を持っています。

薄茶

薄茶は1人一碗で喫します。 軽やかで口当たりがやさしく、一人分ずつ点てて客人に供します。 一般的な茶会や日常的に親しまれる抹茶は、この薄茶を指します。


濃茶

薄茶

点前

練る

点てる

人数

1人また2人~5人 (まわし飲み)

1人

抹茶

4~5g (1人分)

2g

湯量

15cc (1人分)

60cc

温度

80℃前後

80℃前後











❚ 03.抹茶のおいしい季節

抹茶は、春から初夏にかけて収穫された一番茶の新芽を使用し、碾茶(=揉まずに乾燥させた茶)の状態を保ったまま約5か月間低温で熟成させることで旨味が引き出され、最も香り高く上質な抹茶となります。



このようにして作られた抹茶は、秋頃(10月〜11月)が最もまろやかで芳醇な香りを楽しめる旬の時期とされています。



また茶道ではこの時期に「炉開き」と呼ばれる行事が行われ、茶壺の口を切ってその年の新茶を披露する「口切の茶事」が催されます。これは茶道における一年の始まりを祝う大切な行事であり、茶道界では「茶道のお正月」とも呼ばれるほど特別な意味を持っています。











❚ 04.抹茶の効能について

抹茶は粉末茶であるため、茶葉そのものを摂取します。煎茶(=緑茶)のように抽出液を飲むのではなく、栄養成分を丸ごと取り入れることができ、テアニンやカテキン、ビタミン類などが豊富です。



日本に茶が伝わった当初、茶は薬として珍重されていました。史料には、二日酔いの薬として用いられたり、禅僧が眠気覚ましに喫していたことが記されています。

今日においても、カテキンによる抗酸化作用やテアニンによるリラックス効果が注目され、健康茶としての価値が見直されています。



紅茶や烏龍茶とは異なり、抹茶は茶道の点前・作法とともにいただくことで、味覚だけでなく精神性を味わうことができます。これは他のお茶にはない大きな特徴といえます。



抹茶の効能

  • テアニン:リラックス効果

  • カテキン:抗酸化作用

  • ビタミン類:美容・健康維持

  • カフェイン:集中力向上(禅僧が眠気覚ましに愛用)











❚ 05.抹茶の保存について

抹茶は非常にデリケートなため、保存方法が大変重要な要素となります。

抹茶は湿気や光、酸化によって風味が損なわれやすいため、未開封の状態では冷暗所で保管し、開封後はしっかりと密封してなるべく早めに使い切ることが望まれます。

適切な保存によって、抹茶の鮮やかな色、香り、まろやかな味わいを長く楽しむことができます。



保存のポイント

  • 光・湿気・酸化を避ける

  • 未開封は冷暗所で保管

  • 開封後は密封して早めに使い切る











❚ 06.茶の起源

日本における抹茶の起源(渡来)は鎌倉時代(1185-1333)まで遡ることとなります。

当時、中国・宋代(960-1279)で発展した「点茶」の文化が日本に伝わり、禅僧たちの修行の中で飲用されていました。

禅の精神と結びついた茶は、精神を落ち着け、集中力を高める役割を持つと考えられており、単なる嗜好品ではなく、修行を支える重要な存在でした。



室町時代(1336-1573)になると、茶は禅宗寺院から武家や公家の間にも広がり、格式ある嗜好品として扱われるようになります。

同時に茶会は政治や文化の場としても機能し、茶を通じた礼儀やもてなしの心が発展し、この時期に日本独自の茶の湯文化の基礎が形作られていったといえます。



戦国時代(1467-1573)末期には千家開祖/抛筌斎千宗易利休(1522-1591)が抹茶を茶の湯の中心に据え、点前や茶会の形式を整えることで、「侘び茶」という独自の茶の湯文化を完成させることになります。

利休は、華美を避け簡素で静寂を重んじる美意識を茶の湯に取り入れ、抹茶を通じて「もてなしの心」を表現しました。これにより、抹茶は単なる飲み物から、精神性と文化性を兼ね備えた日本文化の象徴として確立されました。



江戸時代(1603-1868)以降も抹茶は茶道の中心として発展を続け、各地の茶人や茶師たちによって技術や作法が受け継がれ、今日に至るまで茶道の精神的支柱となっています。

抹茶の栽培・製造・点前すべての工程に人の手と心が込められており、一服の抹茶には季節感やもてなしの心が凝縮されています。











❚ 07.抹茶ができるまで

抹茶は、摘まれた茶葉をそのまま粉にするのではなく、いくつもの工程を経て仕上げられます。

原料となるのは「碾茶」と呼ばれる特別な茶葉になります。



01.覆下栽培

春に芽吹く新芽へ覆いをかけ、収穫の数週間前から霜除けを兼ねた藁や専用の黒いシートなどで茶畑を覆い、直射日光が当たらないように管理します。 日光を遮ることで、茶葉に含まれる「葉緑素」が増え、渋味のもとになるカテキンの生成が抑えられ、旨味成分のテアニンが豊富な柔らかい茶葉に育ちます。 ※覆下の期間は茶園や気候により異なります。

02.手摘み・収穫

芽が大きくなりすぎる前の新芽だけを丁寧に手摘みします。 芽が若く柔らかいほど、仕上がりの色・香り・味が上質になり、機械による摘む方法もあるが手摘みの方が味も良く高級な碾茶となります。

03.蒸し・乾燥

摘んだ新芽はすぐに蒸して酸化を防ぎ、香りと色を閉じ込めます。 その後、揉まずに乾燥させることで碾茶(仕上茶)となります。 ※蒸さずに酸化させると紅茶や烏龍茶となり、揉みながら乾燥させると玉露になります

04.選別・審査

乾燥した茶葉から葉の大きさを揃え、茎やと葉脈を取り除き、やわらかい葉肉部分だけを選別します。 これが抹茶の滑らかさと鮮やかな緑色の源となります。 その後、専門家により等級が決められます。

05.保存

選別された茶は碾茶のまま低温除湿の状態で保存します。 適切に保存することで香りやまろやかな味わいが保たれます。 保存の際、濃茶用の茶葉は紙袋に包んで茶壷に、薄茶用の茶葉は茶壷内の隙間を埋める形で詰められます。

06.石臼挽き

選別した碾茶を石臼でゆっくりと挽き、きめ細やかな粉末にします。 石臼はただ挽くのではなく石臼の調整がとても繊細であり、熟練された調整技術によりなめらかな抹茶が生まれることになります。 また石臼は摩擦熱を抑え、品質を保つために1時間に40g程度しか挽けず、職人の技と時間を要する工程となります。 ※今日では機械で粉末化された抹茶も流通していますが、伝統的な高級抹茶は石臼挽きで作られます。


こうして手間をかけて作られた抹茶は、茶道の席で大切に扱われ、一服の茶として心を込めて点てられます。茶葉の栽培から抹茶完成までの過程を知ることで、一碗の抹茶の奥深さと、日本文化における茶の価値をより鮮明に感じることができます。











❚ 08.抹茶を点てる

抹茶をおいしく点てるには、湯の温度と茶筅の扱いが重要です。


濃茶をはじめて口にすると苦味を感じるかもしれませんが、茶席ではお茶をいただく前にお菓子を食することで、お菓子の甘みとお茶の苦味が調和し、より一層美味しく味わうことができます。


おいしい抹茶を点てるためには以下の手順で行います


01.茶碗の準備

抹茶を点てる前には、茶碗全体に水分を含ませあらかじめ温めておくことが大切です。 陶器は急激な温度変化に弱く、特に樂茶碗のような柔らかい土の器は熱によってヒビ割れや破損が生じやすいため、使用前にゆっくりと温度を慣らす必要があります。 まず、茶碗にぬるま湯を注ぎ、茶碗全体に水分を含ませながら温めます。 これにより器が安定し、抹茶も点てやすくなります。 ■ 注意 ■ ※長期間使用していない茶碗などは数時間ぬるま湯に浸しておくと安全です ※寒い時期などは急に熱湯を茶碗に注ぐと器と湯の急激な温度差により、ヒビ割れや破損の可能性があるので必ずぬるま湯から徐々に慣らすようにします。 ※特に樂茶碗は急激な温度変化に弱いため、丁寧に温めてから使用することが重要です。

02.抹茶を入れる

―濃茶― 濃茶については品質の高い抹茶を使い、薄茶に比べ抹茶(1人分|4~5g)を多く使用し、湯の量(1人分|約15cc)は少なくして練ります。濃茶はゆっくりと茶筅を動かし、濃厚なとろみを出すのが特徴です。 ―薄茶― 薄茶の場合は抹茶を適量(2g)入れたら80℃前後のお湯を60cc程度注ぎ、茶筅で円を描くように素早く混ぜ、きめ細かい泡を立てることで香りが引き立ち、まろやかで柔らかな口当たりになります。 ​■ 備考 ■※流派により、点て方(茶筅の扱い)が異なります。※薄茶を用いて濃茶をたてると味が渋くなりますので濃茶を練る際は濃茶用の抹茶を使用することがおいしい一碗となります。※注ぐお湯に関しては高温すぎると苦味が出すぎ、低すぎると風味が弱まるため、温度の見極めが大切です。

03.喫す

点てられた一碗に感謝をし、茶碗の正面を向いて出された茶碗を2回ほど左方向に回してから喫します。この所作には茶碗の正面を避けることで亭主の心配りと礼の心が込められています。 ―濃茶― 人数分点てられた濃茶の内、1人分のみ喫します。 ―薄茶― 無理のない程度で2~3口ですべての抹茶を喫すように心がけます。 裏千家では最後の一口は音をたてます。 ■ 備考 ■ ※流派により、喫し方(飲み方)が異なります。



濃茶

薄茶

点前

練る

点てる

人数

1人また2人~5人 (まわし飲み)

1人

抹茶

4~5g (1人分)

2g

湯量

15cc (1人分)

60cc

温度

80℃前後

80℃前後











❚ 09.昔と白とは

抹茶の茶銘の末尾についている「○○の昔」、「○○の白」という表現は、今日においては濃茶=「昔」、薄茶=「白」という区別として用いられています。

しかし、歴史的には「昔」のみが先に存在し、後にその対となる概念として「白」が加えられたとされています。


○○の昔

「昔」という字の由来については諸説ありますが、一説には、最上級の茶葉の初摘みが行われる旧暦三月二十日(廿日)の「廿(にじゅう)」と「日」を組み合わせたものといわれています。 すなわち、最上級の初摘み茶を指す特別な称号として「昔」が用いられた、という解釈です。このように、「昔」という語はもともと品質の高さを示す銘として成立したもので、濃茶=昔という区別は後世の体系によって定着したものです。

​○○の白

「白」が登場したのは後世で、江戸時代(1603-1868)、特に三代将軍/徳川家光(1604-1651)の時代であり、大名茶人たちが宇治の茶師に対して「茶を白く」と求めたことがきっかけと伝えられています。(※ただし、当時の「白く」という表現が具体的に何を指していたのかは明確ではありません。) また初摘みの新芽には特に白い産毛が多く見られ、その貴重な新芽を用いた茶は、粉にした際に白い産毛がふわふわと混じることから、「白」と称されるようになったのではないかともいわれています。


茶人の嗜好も時代とともに移り変わり、古田織部(1544-1615)は青茶を好み、小堀遠州(1579-1647)は白い茶を好んだという記録が残されています。

宇治では「白」と「青」の違いは茶葉の蒸し加減によるとされており、この変化は茶の嗜好の移り変わりを示すものと考えられています。


さらに、銀座平野園(創業明治十六年・東京銀座)には、「御園の白」という銘の濃茶が明治時代(1868-1912)から今日に至るまで存在しています。

当時の店主である草野話一(生没年不詳)が、明治天皇(1852-1912)に献上する抹茶の銘を考えていた際、濃茶に用いる上質な茶葉を臼で挽くと、挽かれた茶粉の周囲に特有の白い輪が広がることを発見し、そこから『御園の白』と名付けたとされています。

また、明治天皇が病を患った際には、草野話一が銀座の地で自ら臼を挽き、特別に製茶したという逸話も伝えられています。











❚ 10.御好抹茶のご紹介

茶道において「御好抹茶」とは、茶道の各流派の家元や著名な茶人が特別に選定し、好んで使用した抹茶のことを指します。その選定には家元の美意識や茶風が反映されており、長年にわたり愛用されてきた格式ある抹茶として位置づけられています。



流派ごとに「御好」は異なり、それぞれの点前や茶席の趣ににふさわしい味わいや香りが追及されています。御好抹茶は、一般的な抹茶以上に厳選された茶葉が用いられ、製茶の工程にも細かな配慮が施されています。そのため、正式な茶事や格の高い茶席では、家元の「御好抹茶」を用いることが多くなっています。



また、御好抹茶には、濃茶用と薄茶用があり、それぞれに適した茶葉の風味や挽き方が考慮されています。



  • 濃茶:特に上質な茶葉が使われ、深みのある旨味とまろやかな甘みが特徴。

  • 薄茶:軽やかな香りと爽やかさを重視し、ほどよい渋味との調和が楽しめます。



御好抹茶は単なる飲料ではなく、流派の歴史や家元の思想を今に伝える存在でもあります。茶人が点前を行う際には、その抹茶が持つ背景や由緒を汲み取りながら一服を点てることで、茶席の趣はより一層深まります。



以下では、各流派を代表的する御好抹茶についてご紹介します。




■ 表千家 ■


十三代御家元|即中斎宗匠御好

深瀬の昔 (山政小山園 詰) 栂乃尾 (山政小山園 詰)

十四代御家元|而妙斎宗匠御好

戸の内昔 (上林春松本店 詰) 小松の白 (上林春松本店 詰) 吉の森 (上林春松本店 詰) 妙風の昔 (丸久小山園 詰) 三友の白 (丸久小山園 詰) 彩雲 (丸久小山園 詰) 吉祥 (丸久小山園 詰) 葉上の昔 (山政小山園 詰)​ 栂の白 (山政小山園 詰)

十五代(当代)御家元|猶有斎御家元御好

栢寿の昔 (祇園辻利 詰) 大雄の白 (祇園辻利 詰) 橋立の昔 (上林春松本店 詰) 三日月の白 (上林春松本店 詰) 彩鳳の昔 (丸久小山園 詰) 友久の白 (丸久小山園 詰) 水明の昔(山政小山園 詰) ​音羽の白(山政小山園 詰)


■ 裏千家 ■


十五代御家元|鵬雲斎大宗匠御好

豊栄の昔 (祇園辻利 詰)​ 萬風乃の昔 (祇園辻利 詰)​ 寿松ノ白 (祇園辻利 詰) 華の白 (上林春松本店 詰) 翔雲 (上林春松本店 詰) 祥宝 (上林春松本店 詰) 松雲の昔 (丸久小山園 詰) 慶知の昔 (丸久小山園 詰) 瑞泉の白 (丸久小山園 詰) 珠の白 (丸久小山園 詰) 喜雲 (丸久小山園 詰)​ 松柏 (丸久小山園 詰) 葉室の昔 (山政小山園 詰)​ 神尾の昔 (山政小山園 詰) 苔の白 (山政小山園 詰)

十六代(当代)御家元|坐忘斎御家元御好

壷中の昔 (祇園辻利 詰)​ 長久の白 (祇園辻利 詰) 嘉辰の昔 (上林春松本店 詰) 緑毛の昔 (上林春松本店 詰) 五雲の白 (上林春松本店 詰) 双鶴の白 (上林春松本店 詰) 松花の昔 (丸久小山園 詰) 清浄の白 (丸久小山園 詰) 千里の昔 (山政小山園 詰)​ 悠和の昔 (山政小山園 詰)


■ 武者小路千家 ■


十四代(当代)御家元|不徹斎御家元御好

嶺雲の昔 (祇園辻利 詰) 翠の白 (祇園辻利 詰) 翠松の昔 (丸久小山園 詰) 祥風 (丸久小山園 詰) 宇治上の昔 (山政小山園 詰) ​奏の白 (山政小山園 詰)。










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