top of page

1-12|茶席の着物|男性|茶席の装いと着物選び|茶道の基礎知識

更新日:5 日前

茶道入門ガイド



ree


■ 茶道の基礎知識 ■

茶席の着物|男性






❚ 目次

❚ 01.茶席の着物

茶道において着物は、単なる衣服ではなく、茶席の空気を整え、亭主と客人の心を結ぶ重要な要素です。季節や茶会の趣旨、格式に合わせた装いを選ぶことで、もてなしの心が静かに表現されます。



茶席の着物は、華美になりすぎず、茶室の設えや季節の風情と調和することが求められます。

男性と女性では装いの形式が異なりますが、いずれも「控えめで上品」であることが基本であり、茶道の精神である「和敬清寂」や「一期一会」を体現する服装が望まれます。



季節によって用いる色柄は異なり、たとえば春は柔らかな色調、夏は涼やかな薄物、秋は深みのある色、冬は落ち着いた暖色など、茶室の雰囲気との調和を重視します。

こうした季節感の表現は、茶会全体の趣を整える大切な要素です。



一方で、結婚式やパーティーにふさわしいような、過度に華やかな訪問着や振袖、煌びやかな帯は、茶道の静謐な空気にそぐわないため避けるべきとされています。

茶席では控えめで品格のある装いが、亭主のもてなしの心をより深く伝えるとされています。



また、着物の選び方や着こなしは、流派や師匠によって考え方が異なる場合があります。

特に正式な茶会に出席する際は、ご自身の先生に相談し、席の格式や目的に即した装いを選ぶことが安心です。



茶席の着物は、日本人の美意識や謙虚さを映し出すものであり、着物を整えて茶席に臨むことは、茶の湯の精神に寄り添う大切な姿勢の一つです。ふさわしい装いと心をもって茶会に向き合うことで、日常を離れた豊かなひとときを味わい、茶道の魅力をより深く感じることができるでしょう。











❚ 02.茶席の着物|男性

茶席における男性の装いは、茶道の精神や作法を具現するための大切な要素です。控えめでありながら品格を備え、茶室の静かな空気を損なわない「調和」を重んじた着こなしが求められます。季節や茶会の趣旨に応じてふさわしい色合い・素材を選ぶことが、茶道における礼を尽くす姿勢につながります。



男性の正装として特に特徴的なのが「十徳」です。

十徳は羽織に似た広袖の装束で、古くは僧侶の「直綴」を起源とし、茶の効用を説いた「茶の十」に由来するとも伝えられています。

御家元や宗匠、教授者、宗名者など、特定の立場にある者だけが着用を許される特別な正装であり、一般の者が許可なく着ることはできません。

茶の湯の世界における「位」を象徴する、最も格式高い男性の装いです。



十徳を着用しない場合の第一礼装は、五つ紋もしくは三つ紋の黒紋付きに、仙台平の袴を合わせた装いです。仙台平は重厚な縞柄が特徴で、格の高さを示す男性礼装の定番として用いられます。



準礼装としては、黒以外の茶色・紺・鼠(グレー)などの無地染めの紋付に、羽織と袴を合わせるのが一般的です。羽二重や上質な白生地を染めた着物に、五つ紋、三つ紋、一つ紋のいずれかを入れ、茶会の格や趣旨に応じて選びます。略礼装では紋を入れず、やや短めの着丈に仕立てることもあり、日常の稽古や気軽な茶会にふさわしい装いとなります。



袴には、落ち着いた無地の御召や紬がよく用いられ、着物の素材や色調との調和を重視し、派手すぎない控えめなものが適しています。

茶席に入る際は羽織を脱ぎ、白足袋に履き替えるのが基本の作法とされています。



男性の着物は、茶道の精神である「和敬清寂」や「一期一会」の心を装いによって表すものでもあります。季節に合った色や素材、茶会の格式にふさわしい組み合わせを慎重に選ぶことは、もてなしへの敬意を示す行為そのものです。

流派や先生によって細かな作法や定めが異なるため、装いに迷う場合は必ずご自身の先生に相談することが望まれます。











❚ 03.茶席の着物|男性|季節

​茶席における男性の装いは、季節の移ろいに寄り添いながら、茶室の雰囲気を損なわない落ち着いた佇まいが求められます。着物にも季節に応じた種類があり、大きく「袷 ~あわせ~」「単衣 ~ひとえ~」「絽・紗・麻 ~ろう・しゃ・あさ~」の三つに分けられます。

それぞれの特徴を理解し、季節の趣を感じさせる装いを整えることが大切です。



以下では、茶席でよく用いられる男性の着物の季節とその特徴について解説します。


袷 ~あわせ~

袷は裏地のついた着物で、主に十月から五月の長い期間に着用されます。 暖かさがあり、秋から春にかけての肌寒い時期に適しています。 茶席では、袷に羽織を重ねて入室することはできないため、男性の場合、長着に袴を合わせた姿が正式であり、落ち着いた茶席にも自然に調和します。

 

単衣 ~ひとえ~

単衣は裏地のない一枚仕立ての着物で、六月と九月に用いられます。 表地自体は袷と同じ素材であることが多く、透けない生地で仕立てられているのが特徴です。 ただし、肌襦袢・長襦袢・半衿などは六月〜九月の期間、絽や紗、麻といった軽やかな夏素材に替えることで、涼しさと季節感を演出します。

絽・紗・麻 ~ろう・しゃ・あさ~

七月・八月の盛夏には、絽・紗・麻といった透け感のある素材の着物が選ばれます。 裏地のない薄手の生地で仕立てられ、見た目にも風通しよく、夏の茶席にふさわしい清涼感を与えます。 帯も同じく透け感のある夏帯を合わせ、袴地や角帯にも夏専用の素材が用意されています。 全体として軽やかで涼やかな印象となり、暑い季節でも快適に過ごすことができます。










❚ 04.着物|男性|帯

男性の帯は、女性に比べて種類が少なく、基本的に「角帯 ~かどおび~」と「兵児帯 ~へこおび~」の二種類に大別されます。

一般的に、角帯は礼装から外出着まで幅広く利用され、着物や浴衣に共用されることが多いですが、茶席では扇子をはさむため、特に角帯が適しているとされています。


以下では、茶席でよく用いられる男性の着物の帯とその特徴について解説します。


角帯 ~かどおび~

角帯は男性の帯の中でも最も格式が高く、礼装から外出着まで幅広い場面で着用されます。 素材には絹をはじめ、木綿、麻、合成繊維など多様な種類があり、繊維文化の変化に伴ってそのバリエーションは年々増えつつあります。 茶席では、しっかりと締まり形が崩れにくい点から、角帯が最適とされています。 また、夏の茶会では、絽・紗・羅など透け感のある夏帯が使われ、見た目にも軽やかで涼しげな印象を与えます。 季節感を装いに取り入れることで、茶室の雰囲気とも自然に調和します。

​兵児帯 ~へこおび~

兵児帯は柔らかく幅の広い帯で、締め心地が軽く、カジュアルな着こなしやくつろぎ着に適しています。体への負担が少なく、気軽に結べるため日常的な装いとしても親しまれてきました。 兵児帯の中には、帯の端が絞られたものもあり、その絞りの細かさが高級感や仕立ての良さを見分けるひとつの目安となります。 ただし、茶席では格式や実用性の観点から角帯が主流であり、兵児帯が用いられる場面は限られます。










❚ 05.着物|男性|袴

茶道における男性の着物について、「袴」は、着物とともに用いられる必須の装いであり、正式な茶席での品格を示す要素です。

男性の茶席の着物に合わせる「袴」について、以下の三種類の特徴と用途をご紹介いたします。


以下では、茶席でよく用いられる男性の着物の袴とその特徴について解説します。


裂地:仙台平 ~せんだいひら~

袴地として最も格式が高いとされるのが「精好仙台平」です。 宮城県仙台市で織られる絹織物で、堅牢でありながらしなやかさを兼ね備えた質感が特徴です。 縞の品格ある佇まいは、礼装・正装にふさわしく、格式高い茶会での着用に最適とされています。 茶道の男性礼装における袴地の代表格と言える存在です。

​形状:行灯袴 ~あんどんばかま~

行灯袴は、主に十月から五月の季節に着用され、内側に中仕切りを設けず筒状に仕立てられた袴で、その形が行灯に似ていることから名付けられています。 無駄のない端正な姿が特徴で、茶室の静けさと調和するため、茶席で多く用いられます。 動きも妨げにくく、格式と実用性を兼ね備えた袴です。

​形状:馬乗り袴 ~うまのりばかま~

馬乗り袴は、内側が二股に分かれた構造になっている袴で、もともとは乗馬や武士の実用に用いられてきた形で裾さばきが良く動きやすい点が特徴です。 行灯袴に比べると日常的に着用される場面が多い袴で茶会でも、堅苦しすぎない場や動きやすさを重視する場合に適しています。










❚ 06.着物|男性|その他

​茶席における男性の正装は、着物や袴だけでなく、その下に着用する襦袢や半襟、さらに腰紐・足袋・履物などの細かな装身具によって完成します。

これらの小物は、見た目の美しさだけでなく、着姿の安定や所作の整いにも深く関わる重要な要素です。茶席の格式と静謐な雰囲気を損なわないため、選び方や扱い方にも細やかな配慮が求められます。


以下では、茶席でよく用いられる男性の着物のその他とその特徴について解説します。


襦袢 ~じゅばん~

襦袢は着物の下に着る下着で、着物の滑りを良くし、美しいシルエットを保つために用いられます。種類には長襦袢・半襦袢・肌襦袢などがあり、季節や着物の格に応じて使い分けます。 長襦袢は着物全体を覆うため最も一般的で、着崩れを防ぐ効果があります。 半襦袢は襟元のラインを美しく見せ、特に夏場など涼しさを求める時期に用いられることもあります。

​半襟

半襟は襦袢に縫い付けて使用する替え襟で、襟元を清潔に保つとともに、着物の印象を左右する重要な小物です。 茶席では白を基調とした控えめなものが基本とされ、季節により絽や麻などの素材が使い分けられます。 半襟の仕立てが整っていることは、茶席の装いにおいて欠かせない所作の一つです。

​腰紐

腰紐は着物を体に固定し、着姿を整えるために必須の補助具です。 シンプルで機能的なものが好まれ、素材は綿やモスリンなどが一般的です。 腰紐の締め方ひとつで着物全体のシルエットが変わるため、実用性と技術が求められる道具でもあります。

​足袋

茶席では必ず白の足袋を着用します。どのような着物にも合わせられ、もっとも格式の高い色とされているためです。 たとえ外出時に色足袋を履いていたとしても、茶席に入る前には白足袋に履き替えるのが作法であり、清潔感を大切にする茶道の精神が反映されています。

​履物

茶席で用いる履物は、落ち着いた色合いで、品よく控えめなものが選ばれます。 雪駄や草履が一般的で、着物や袴との調和が重要視されます。 履物を整えることは、茶道における立居振る舞い全体の印象を左右するため、見えない部分ながら大切な配慮です。


これらの小物はすべて、茶席での装いを整え、茶道の持つ繊細な美意識を反映するために重要な要素です。流派や先生の教えによって選び方が異なる場合もありますが、いずれも着物の品格と着姿の美しさを引き立たせるために欠かすことができない道具です。

正しい小物使いによって、茶席にふさわしい落ち着きと品格を備えた装いが完成します。











商品カテゴリー
茶道具|中古道具市
bottom of page