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1-6|茶事|茶事とは|茶事の基礎知識と心得|茶道の基礎知識

更新日:2025年12月18日

茶道入門ガイド





■ 茶道の基礎知識 ■

茶事






❚ 目次











❚ 01.茶事 ―茶事とは―

茶事とは、茶道における最も正式で格式あるもてなしの場です。

炭点前(初炭|後炭)、懐石料理、濃茶、薄茶などを通じて、亭主と客が心を交わす総合的な茶の湯の行事であり、茶道の精神と美意識が最も濃く表れます。



露地にはじまり、茶室の設え、掛物、炭、茶事懐石、茶道具、花、掛物など、すべての要素が一体となって一席が構成されます。

また茶事には様々な作法があり、茶会のように誰でも気軽に参加できるものではなく、ある程度の茶道の習熟度が求められるため、未修練者が招かれる機会は限られています。



本来の茶事では、亭主一人が茶室の設え、炭の用意、懐石の調理、道具の支度、点前すべてを担い、亭主の心と技量がそのまま一席の質を決める、茶道における最も重みのある場です。



■ 抹茶一服 ■

今日、私たちが目にする茶会や飲食店、甘味処で提供される抹茶一服は、この正式な茶事の一部(薄茶)を切り取ったものです。











❚ 02.茶事 ―茶事と茶会の違い―

茶事は、懐石・濃茶・薄茶を中心に、亭主が少人数の客をもてなす正式の茶の湯です。

一方、初心者でも参加しやすい「大寄せ茶会」などでは、炭点前(初炭|後炭)、茶事懐石、濃茶を省き、薄茶と菓子(主菓子・干菓子)のみで行う略式の形式が一般的となります。

同じ「お茶の席」であっても、茶事と茶会では目的や内容、所要時間、参加人数などが大きく異なります。



ここでは、初めての方にも分かりやすいように、両者の主な違いをまとめてご紹介します。



■ 概要 ■


茶事

茶会

席数 (1日)

1席

大寄せ茶会:2~5席

客人

1人~5人

1席:10人~50人

時間

約4時間

1席:30分程度

※大寄せ茶会はその茶会の規模により、一度に複数の茶席が設けられ、1日でさまざまな茶席を回ることができます。また亭主は1日で複数回に渡り釜を掛けることとなります。






■ 構成要素 ■


茶事

茶会

前礼 (前日)


受付


待合・席入り

炭点前 (初炭)


茶事懐石


点心


主菓子

中立


濃茶

炭点前 (後炭)


干菓子

薄茶

退席

後礼 (後日)


※点心 ……… 茶事懐石を簡略化したもの=お弁当など

※濃茶 ……… 大寄席の茶会などでは薄茶のみの場合があります











❚ 03.茶事 ―さまざまな茶事―

茶事には、季節や時間帯、もてなしの目的に応じて多様な形式があり、それぞれに独自の趣としつらえがあります。

中でも「茶事七式」は、茶の湯で代表的とされる七つの茶事をまとめたもので、茶の湯の理解を深めるうえで欠かせない基本的な様式です。



ここでは、代表的な茶事の種類とその特徴を紹介します。




朝茶事

読み:あさちゃじ 風炉の季節(5月〜10月)の早朝に行われる、最も爽やかな趣をもつ茶事。

太陽が昇りきる前の清々しい空気の中で懐石・濃茶・薄茶をいただきます。

正午の茶事

読み:しょうごのちゃじ 最も一般的な茶事で、懐石・濃茶・薄茶の順で進む基本的な形式。

一年を通じて行われます。

夜咄の茶事

読み:よばなしのちゃじ 炉の季節(11月〜4月)の夕刻から始まる茶事。

行灯の柔らかな灯りを中心に、冬の静謐な雰囲気を味わいます。

暁の茶事

読み:あかつきのちゃじ 冬の夜明け前後に行われる茶事。

冷気と薄明のなかで、夜から朝へと移ろう時の趣を楽しみます。

飯後の茶事

読み:はんごのちゃじ 食事(茶事懐石)を省き、菓子と茶を中心に行う簡素な形式。

比較的短時間で行うことができます。

不時の茶事

読み:ふじのちゃじ 突然の来客に対し、亭主が臨機応変にもてなすための茶事。

茶人としての心構えや準備が問われる形式でもあります。

跡見の茶事

読み:あとみのちゃじ 茶事が終わったあと、希望者に道具やしつらえを披露するために行われる茶事。

道具の鑑賞や趣向の理解を深める機会となります。











❚ 04.茶事 ―茶事の流れ―

茶事は、茶道における最も格式の高いもてなしの形式であり、亭主と客が一体となって茶の湯の精神を深く味わうための場です。

一般的には、炭点前(初炭|後炭)、茶事懐石、濃茶、薄茶を中心とした一連の進行で構成され、亭主の趣向や季節に合わせて緻密に組み立てられます。



茶事には多様な種類がありますが、はじめて学ぶ際の基本として理解しておきたいのが、もっとも標準的な形式である「正午の茶事」です。

茶事は季節によって点前順序が異なり、炉(11月〜4月)と風炉(5月〜10月)では、懐石と初炭の出る順番が入れ替わります。



ここでは、正午の茶事における「炉」と「風炉」の大まかな流れを紹介します。



■ 正午の茶事|炉 ■


【前日まで】 前日:招待→前礼

【当日】 席入:寄付→待合→迎付→席入

初座:炭点前(初炭)→懐石→菓子

休憩:中立

後座:濃茶→炭点前(後炭)→薄茶

退出:退出


【後日】後日:後礼



■ 正午の茶事|風炉 ■


【前日まで】

前日:招待→前礼


【当日】

席入:寄付→待合→迎付→席入

初座:懐石→炭点前(初炭)→菓子

休憩:中立

後座:濃茶→炭点前(後炭)→薄茶

退出:退出


【後日】

後日:後礼



 

以下では、「正午の茶事(炉)」の基本的な流れを、はじめての方にも分かりやすいよう、各段階の意味と所作を交えて紹介します。

あくまでも一例であり、その所作や意味については確定するものではありません。


​■ 前日まで ■

招待・前礼

亭主は、茶事の日時・場所・趣向(主題)・準備内容を記した招待状を客へ送り、正式に参加を依頼します。客は、できるだけ早く返書を送り、出席の意を伝えることが礼とされています。 正式な作法では、茶事の前日に客一同が亭主宅を訪れ、改めて感謝を伝える前礼を行います。前礼は「明日の茶事に伺わせていただきます」という挨拶を交わすもので、かつて遠方からの移動が多かった時代に「無事到着しました」と亭主に知らせる意味もありました(諸説あり)。 今日では前礼を省略することもありますが、亭主への敬意と感謝を示す大切な習慣としてその精神が受け継がれています。



■ 当日 ■

​一、寄付・待合

当日はあまり早く着きすぎるのも、亭主の準備の妨げになるため、約束の時刻の少し前(15分前程度)に到着するのが礼儀です。 寄付で新しい足袋に履き替え、身だしなみを整えた後、待合に移り、掛物などを拝見しながら静かに過ごします。 待合は、茶事の趣向を感じ取り、心を落ち着けるための大切な時間です。 客が揃うと末客が亭主側へ合図を送り、白湯が供されます。 準備が整えば、正客を先頭に露地へ進み、腰掛待合で亭主の迎えを待ちます。

​二、腰掛待合・迎付

腰掛待合で静かに控えていると、亭主が中門まで迎えに現れ、客は言葉を交わさず一礼し、初めての対面を交わします。 亭主が茶室へ戻るのを見送った後、客はいったん腰掛に戻り、やがて亭主の案内により席入りの準備をします。

三、席入り

蹲踞で手口を清め、身を正して茶室へ向かい、一人ずつ静かに茶室へ入室します。 茶室の入口(躙口)には「身分の高い人物であっても茶の湯においては皆が平等である」という利休の精神が込められており、頭を屈め、茶室の空気に敬意を払い入室します。 入室後は、床の間や花、道具を拝見し、亭主の趣向を静かに味わい、これから始まる茶事に心を落ち着けます。

​​四、炭点前(初炭/炉)

炭点前は、釜の湯を適温に保ち、茶室の空気を整えるための大切な所作です。 茶事では初炭と後炭の二度の点前が行われ、初炭は茶事懐石を食す前に茶室の雰囲気を整えるために行われます。 亭主により炭を組み、香が添えられることで炭の香りが茶室全体へと広がり、静かで落ち着いた茶の湯の世界へと誘います。

​​五、茶事懐石

茶事懐石は亭主のもてなしの心を最も直に感じられる食事で、「一汁三菜」を基本とします。 「膳(飯椀・汁椀・向付)」から始まり、酒、煮物椀、焼物、箸洗、八寸、湯桶、香の物と続き、最後に主菓子が供され、後の濃茶へ続く大切な役割を果たします。 茶事懐石では量より質を重んじ、旬の素材を最もおいしく味わえる形で供するのが特徴です。

​​​六、中立

中立とは、茶事懐石と濃茶の間に設けられる休憩の時間です。 客は茶室を退出し、腰掛待合で露地の風情を楽しみながら心を整え、亭主は茶室の設えを改め、濃茶の点前の準備を整えます。 準備が整うと亭主は銅鑼を「大小大小中中大」と七点打ち、準備が整ったことを知らせます。 銅鑼の音を聞いた客は再び蹲踞で清めてから席入り、新たに設えられた道具を拝見し、濃茶の時間に備えます。

七、濃茶

濃茶点前が始まり、練り上げられた濃茶を一碗で同席の客とまわし飲みします。 一碗を共にいただくことで心を一つにする、茶道の精神が最もよく表れる場面です。 全員が飲み終えると道具の拝見が行われ、茶碗や茶杓、棗などの意匠や趣向を味わいます。 茶事は至高の濃茶を味わうための会であり、濃茶を喫する瞬間がハイライトと言えます。

​​八、炭点前(後炭/炉)

後炭は、濃茶の後に火の勢いを整え、次の薄茶に適した湯温を保つための点前です。 既に燃えている炭を調整するため、火力の見極めが重要になります。香も改めて添えられ、香のかすかな薫りとともに、濃茶の余韻を味わいながら、次の薄茶へと流れが移行していきます。 後炭の所作には、単に火の管理をするだけでなく、茶事の静寂と調和を保つ役割もあるのです。

​​九、薄茶

煙草盆、干菓子が運ばれ、薄茶点前が始まります。 正客から干菓子を取り、続いて点てられた薄茶をいただきます。 その後、所望により薄茶器や茶杓の拝見が行われます。 茶器や茶杓には亭主の趣向が反映されており、それを拝見することで、茶事の意図をより深く感じ取ることができます。 薄茶の時間は濃茶よりも和やかな雰囲気で、道具や設えについて会話が交わされることも多く、茶事の余韻を楽しむ時間となります。


​​​十、退席

薄茶が終わると、正客が亭主に感謝を述べ、亭主の一礼を受けて茶事の終了が告げられます。 客は順に席を立ち、床前で最後の拝見をして茶室を退出します。 末客は戸を軽く音を立てて閉め、全員の退出を「音」で亭主へ知らせます。 客は腰掛待合で身支度を整え、互いに挨拶を交わして静かに退出します。 流儀によっては「送り礼」と呼ばれる作法が行われる場合もあります。 ―送り礼― 亭主が見送りに出る際、客はすぐに立ち去らず、にじり口に近い方から正客を先頭に並んで待ちます。 亭主がにじり口を開けて見送ろうとするのを正客が制し、そのまま露地を歩いて待合へ戻るのが「送り礼」です。



■ 後日 ■

​​後礼

茶事の当日、茶事が終わり退室すると、客と亭主が再び顔を合わせることはありません。 正式な作法では、翌朝、客が揃って亭主宅を訪れ挨拶する「後礼」があります。 今日では、茶事の翌日に礼状を送る形が一般的です。 礼状では、もてなしへの感謝に加え、設えや料理、道具の趣向について改めて礼を述べます。 後礼は、茶事が単なる一日の催しではなく、亭主と客の心の交流として完結するという茶道の精神を表す重要な作法です。










❚ 05.茶事 ―茶事懐石―

茶事懐石は、亭主が客をもてなす心を最も端的に表す大切な食事です。茶事全体の流れをつなぐ重要な役割を担っており、単なる料理ではなく、濃茶へ向けて心と身体を整えるための茶の湯特有のもてなしの形式です。



茶事懐石の構成や料理内容、作法などの詳細については、下記の専用ページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。



茶事懐石についてもっと詳しく学ぶにはコチラ












❚ 06.茶事 ―はじめての茶事―

茶事は、茶道における最も格式の高いもてなしの場であり、茶の湯の集大成として位置づけられています。

初めて茶事に招かれた場合、どのような流れで進むのか、どのような所作や心構えが求められるのかを知っておくと、安心して参加することができます。



はじめての茶事に招かれた際の基本知識については、下記の専用ページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。



はじめての茶事についてもっと詳しく学ぶにはコチラ












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