7-7|利休百首全首一覧|07.利休百首|千宗易利休|抛筌斎
- 2023年5月12日
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更新日:9月16日
全10回 抛筌斎 千宗易 利休

利休百首
― 利休百首全首一覧 ―
❚ 利休百首を一望する
本項では、千利休が後世に遺した「利休百首」全102首を一覧でご紹介します。
この百余首には、茶道の基本作法や稽古の心得、道具の扱い方から、精神性や人生観にまでおよぶ広範な教えが詠み込まれています。
それぞれの一首に込められた言葉は、茶の湯を志す者にとって、今なお学びの指針として深い意味を持ち続けています。
❚ 利休百首 一覧

一、
その道に入らんと思う心こそ我身ながらの師匠なりけれ
二、
ならひつつ見てこそ習へ習はずに よしあしいふは愚かなりけり
三、
こころざし深き人にはいくたびも あはれみ深く奥ぞ教ふる
四、
はぢを捨て人に物問ひ習ふべし 是ぞ上手の基なりける
五、
上手には好きと器用と功積むと この三つそろふ人ぞ能くしる
六、
点前には弱みをすててただ強く されど風俗いやしきを去れ
七、
点前には強みばかりを思ふなよ 強きは弱く軽く重かれ
八、
何にても道具扱ふたびごとに 取る手は軽く置く手重かれり
九、
点前こそ薄茶にあれと聞くものを 麁相になせし人はあやまり
十、
濃茶には手前を捨てて一筋に 服の加減と息をもらすな
十一、
濃茶には湯加減あつく服は尚ほ 泡なきやうにかたまりもなく
十二、
とにかくに服の加減を覚ゆるは 濃茶たびたび点てて能く知れ
十三、
よそにては茶を汲みて後茶杓にて 茶碗のふちを心してうて
十四、
中継は胴を横手にかきて取れ 茶杓は直におくものぞかし
十五、
棗には蓋半月に手をかけて 茶杓を円く置くとこそしれ
十六、
薄茶入蒔絵彫物文字あらば 順逆覚え扱ふと知れ
十七、
肩衝は中次とまた同じこと 底に指をばかけぬとぞ知れ
十八、
文琳や茄子丸壺大海は 底に指をばかけてこそ持て
十九、
大海をあしらふ時は大指を 肩にかけるぞ習ひなりける
二十、
口ひろき茶入れの茶をば汲むといふ 狭き口をばすくふとぞいふ
二十一、
筒茶碗深き底よりふき上り 重ねて内へ手をやらぬもの
二十二、
乾きたる茶巾使はば湯はすこし こぼし残してあしらふぞよき
二十三、
炭置くはたとへ習ひにそむくとも 湯のよくたぎる炭は炭なり
二十四、
客になり炭つぐならばそのたびに 薫物などはくべぬことなり
二十五、
炭つがば五徳はさむな十文字 縁をきらすな釣合をみよ
二十六、
焚え残る白灰あらば捨ておきて また余の炭を置くものぞかし
二十七、
炭おくも習ひばかりにかかはりて 湯のたぎらざる炭は消え炭
二十八、
崩れたるその白灰をとりあげて 又たきそへることはなきなり
二十九、
風炉の炭見ることはなし見ぬとても 見ぬこそ猶も見る心なれ

三十、
客になり底取るならばいつにても 囲炉裏の角を崩し尽すな
三十一、
客になり風炉の其うち見る時に 灰崩れなん気づかひをせよ
三十二、
墨蹟をかける時にはたくぼくを 末座の方へ大方はひけ
三十三、
絵の物を掛る時にはたくぼくを 印ある方へ引きおくもよし
三十四、
冬の釜囲炉裏ふちより六七分 高くすえるぞ習ひなりける
三十五、
絵掛けものひだり右向きむかふむき 使ふも床の勝手にぞよる
三十六、
姥口は囲炉裏縁より六七分 低くすえるぞ習ひなりける
三十七、
品々の釜によりての名は多し 釜の総名鑵子とぞいふ
三十八、
置き合せ心をつけて見るぞかし 袋は縫目畳目に置け
三十九、
運び点て水指置くは横畳 二つ割にて真ん中に置け
四十、
茶入又茶筅のかねをよくも知れ あとに残せる道具目当に
四十一、
何にても置き付けかへる手離れは 恋しき人わかるると知れ
四十二、
余所などへ花を贈らば其花は 開きすぎしはやらぬものなり
四十三、
水指に手桶出さば手は横に 前の蓋取り先に重ねよ
四十四、
釣瓶こそ手は竪におけ蓋取らば 釜に近づく方と知るべし
四十五、
小板にて濃茶を点てるば茶巾をば 小板の端に置くものぞかし
四十六、
掛物の釘打つならば大輪より 九分下げて打て釘も九分なり
四十七、
喚鐘は大と小とに中々に大と五つの数を打つなり
四十八、
茶入より茶掬ふには心得て 初中後すくへそれが秘事也
四十九、
湯を汲むは柄杓に心つきの輪の そこねぬやうに覚悟してくむ
五十、
柄杓にて湯をくむ時の習には 三つの心得あるものぞかし
五十一、
湯を汲みて茶碗に入るる其時の 柄杓のねぢは肱よりぞする
五十二、
柄杓にて白湯と水とを汲むときは 汲むと思はじ持つと思はじ
五十三、
茶を振るは手先を振ると思ふなよ 臂よりふれよそれが秘事なり
五十四、
床にまた和歌の類をば掛るなら 外に歌書をば荘らぬと知れ
五十五、
外題あるものを余所にて見るときは 先づ外題をば見せて披けよ
五十六、
羽箒は風炉に右羽よ炉の時は 左羽をば使ふとぞ知る
五十七、
名物の茶碗出でたる茶の湯には 少し心得かはるとぞ知れ
五十八、
暁は数寄屋のうちも行燈に夜会等には短檠を置け
五十九、
燈火に油をつがば多くつげ 客にあかざる心得と知れ

六十、
ともしびに陰と陽との二つあり あかつき陰によひは陽なり
六十一、
いにしへは夜会等には床の内 掛物花はなしとこそきけ
六十二、
炉のうちは炭斗瓢柄の火箸 陶器香合ねり香としれ
六十三、
いにしへは名物等の香合へ 直ちにたきもの入れぬとぞきく
六十四、
風炉の時炭は菜籠にかね火箸 塗り香合に白檀をたけ
六十五、
蓋置きに三つ足あらば一つ足 前に使ふと心得ておけ
六十六、
二畳台三畳台の水指は 先づ九ツ目に置くが法也
六十七、
茶巾をば長み布幅一尺に 横は五寸のかね尺と知れ
六十八、
帛紗をば竪は九寸よこ巾は 八寸八分曲尺にせよ
六十九、
うす板は床かまちより十七目または十八十九目に置け
七十、
うす板は床の大小また花や花生によりかはるしなしな
七十一、
花入の折釘打つは地敷居より 三尺三寸五分余もあり
七十二、
花入に大小あらば見合せよ かねをはずして打つがかねなり
七十三、
竹釘は皮目を上に打つぞかし 皮目を下になすこともあり
七十四、
三つ釘は中の釘より両脇と 二つわりなる真ん中に打て
七十五、
三幅の軸をかけるは中をかけ軸先をかけ次は軸もと
七十六、
掛物を掛けて置くには壁付を 三四分すかしおく事ときく
七十七、
花見よりかへりの人に茶の湯せば 花鳥の絵をも花も置くまじ
七十八、
時ならず客の来らば点前をば 心は草にわざをつつしめ
七十九、
釣船はくさりの長さ床により出船入船浮船と知れ
八十、
壺などを床に飾らん心あらば 花より上に飾り置くべし
八十一、
風炉濃茶必ず釜に水さすと 一筋に思ふ人はあやまり
八十二、
右の手を扱ふ時はわが心 左の方にあるとしるべし
八十三、
一点前点るうちには善悪と 有無の心をわかちをも知る
八十四、
なまるとは手つづき早く又おそく ところどころのそろはぬをいう
八十五、
点前には重きを軽く軽きをば 重く扱う味ひをしれ
八十六、
盆石を飾りし時の掛物に 山水などはさしあひと知れ
八十七、
板床に葉茶壺茶入品々を かざらでかざる法もありけり
八十八、
床の上に籠花入を置く時は 薄板などはしかぬものなり
八十九、
掛物や花を拝見する時は 三尺程は座をよけてみよ
九十、
稽古とは一より習ひ十を知り 十よりかえるもとのその一
九十一、
茶の湯をば心に染めて眼にかけず 耳をひそめて聞くこともなし
九十二、
茶を点てば茶筅に心よくつけて 茶碗の底へ強くあたるな
九十三、
目にも見よ耳にもふれよ香を嗅ぎて ことを問ひつつよく合点せよ
九十四、
習ひをばちりあくたぞと思へかし 書物は反古腰張にせよ
九十五、
水と湯と茶巾茶筅に箸楊枝 柄杓と心あたらしきよし
九十六、
茶はさびて心はあつくもてなせよ 道具はいつも有合にせよ
九十七、
茶の湯には梅寒菊に黄葉み落ち 青竹枯木あかつきの霜
九十八、
茶の湯とはただ湯をわかし茶をたてて のむばかりなる事と知るべし
九十九、
もとよりもなき古の法なれど 今ぞ極る本来の法

百、
規矩作法守りつくして破るとも 離るるとても本を忘るな
百一、
釜一つあれば茶の湯はなるものを 数の道具をもつは愚かな
百二、
かず多くある道具をも押しかくし 無きがまねする人も愚かな
❚ 利休の教え、百首を貫く心

全102首にわたる『利休百首』は、単なる作法の解説にとどまらず、稽古の姿勢、もてなしの心、道具との向き合い方、そして「茶とは何か」という本質に迫る教えが凝縮されています。
それぞれの歌は短くとも、その一つひとつに利休の深い思想と感性が宿っており、読み返すたびに新たな気づきや学びが得られます。
この一覧を通して利休の精神を改めて辿り、日々の稽古や実践のなかに生かしていただければ幸いです。
❚ 次回は・・・
次回は「8-1|利休の茶道具|08.利休の茶道具」へと進みます。
ここでは、利休が茶道具に吹き込んだ新しい価値観について取り上げ、その美意識や選定基準、背景にある思想を読み解いてまいります。
利休の「わび」の精神がどのように道具に表れているのか、その具体像に迫ります。
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