3-2|利休の遺偈|03.利休の遺偈|千宗易利休|抛筌斎
- ewatanabe1952

- 2023年6月5日
- 読了時間: 6分
更新日:9月16日
全10回 抛筌斎 千宗易 利休

利休の遺偈
― 利休の遺偈 ―
❚ 利休の遺偈

じんせいしちじゅう りきいきとつ
人生七十 力囲希咄
わがこのほうけん そぶつともにころす
吾這寶剱 祖仏共殺
ひっさぐるわがえぐそくのひとつたち
提ル我得具足 一太刀
いまこのときぞてんになげうつ
今此時そ天に抛
千利休*が切腹**を命じられた際に詠んだこの遺偈**は、禅宗**における――悟りの境地―― を象徴するものであり、利休の茶道哲学と人生観が凝縮された言葉です。
この偈には、――人生の達観――、――無常の悟り――、――自己の決意――が込められており、茶の湯の道を極めた利休が最期の瞬間に発した言葉として、後世に大きな影響を与えました。
この遺偈は単なる――辞世の句**――ではなく、利休が生涯を通じて追い求めた茶道の極意と、その最期の境地を表す言葉 です。
❚ 利休が遺した言葉

以下に、利休の遺偈を構成する四行について解説します。
人生七十 力囲希咄|じんせいしちじゅう りきいきとつ
……… 禅宗において強い気概や悟りの境地を示す語句であり、悟りの声を発する瞬間を意味するとも解釈できます。
吾這寶剱 祖仏共殺|わがこのほうけん そぶつともにころす
……… 単に仏を否定する意味ではなく、――師や仏の教えを超越し、自らの道を極めた――という悟りの境地を表しています。
提ル我得具足 一太刀|ひっさぐるわがえぐそくの ひとつたち
……… 得具足(えぐそく)=「すべてを得た者」という意味があり、すでに悟りを得た者が最後に振るう一太刀を指します。
今此時そ天に抛|いまこのときぞてんになげうつ
……… 最期の瞬間に一切の執着を捨て、悟りの境地へ至ることを示しています。
❚ 利休を今に伝える

なお、この遺偈には正式な現代訳は存在しませんが、現代訳の一例として以下のような意訳が考えられます。
01.現代訳
……… 七十年生きた私の人生に、今ここで終止符を打つ私はこの宝剣をもって、自らの命だけでなく、師や仏すらも超え、自らが歩んできた道を断ち切る。 そして私は何も恐れず、この信念と共に、今こそ天へと身を投げ出す
02.現代訳
……… 七十年を生きてきた今、私はついに真理を悟りました。 宝剣をとり、師や仏の教えも断ち切り、私は全てを受け入れ、迷いなくこの天に我身を解き放ちます
03.現代訳
……… 私が歩んだ七十年の人生、もう心に迷いはありません。 すべてを受け入れ、仏と共に天旅立ちます。
利休の遺偈は、茶道の精神のみならず、禅の思想や生き方そのものを象徴する言葉 であり、現代においても深く考察され続けています。
❚ 利休が遺した思想

利休が遺したこの遺偈は、死の瞬間に悟りの境地を示したものであり、禅宗と茶道が重なる精神性の結晶です。
その内容は、仏教の教義すらも超え、自己の悟りと死を肯定的に表現したものとして、時代を超えて今なお強い感銘を与えています。
単なる辞世の句ではなく、生涯をかけて体現した思想の最終章であるといえるでしょう。
❚ 古田織部の泪

千利休が豊臣秀吉*より切腹を命じられた折、自ら削り上げたと伝わる、最後の茶杓**があります。
その姿は薄造りでやや細身で直線的な姿を保ち、節は茶杓の中央よりやや下に位置し、全体に簡素で潔い印象を与えます。
利休は切腹の命を受けた後に最期の茶会を催し、高弟**であった古田織部*を招きました。
その席でこの茶杓を用い、自由闊達な人柄であった古田織部に対し―初心を忘れずに―との意を込め、この直線的な姿をした茶杓を形見**として托したと伝えられています。
利休の死後、古田織部はこの形見を常に拝するため、黒漆塗の筒を誂え、その正面に四方の窓を設け、茶杓の姿が常に見えるように納めました。
またその姿から古田織部が「泪」と銘**を付けました。(※諸説あり)
この茶杓を筒に納め立たたせた姿は、まるで位牌に向かって手を合わせるような佇まいを見せ、師に対する深い敬慕の念がうかがえます。
千利休-古田織部-徳川家康*-徳川義直*へと伝来し、今日は徳川美術館**に所蔵されています。
❚ 次回は・・・
次回の「4-1|利休の茶の湯|04.利休の茶の湯」では、千利休が生涯をかけて磨き上げた茶の湯の在り方について、理念・作法・道具の美意識など多角的な視点から探っていきます。
わびの精神**を根幹としながらも、利休ならではの革新性や実践の工夫がどのように展開されたのか、その全体像をご紹介します。
登場人物
千利休|せん・りきゅう
……… 天下三宗匠|千家開祖|抛筌斎|千宗易|1522年―1591年
豊臣秀吉|とよとみ・ひでよし
……… 天下人|関白|太閤|1536年―1598年
古田織部
………
徳川家康
………
徳川義直
………
用語解説
切腹
………
遺偈|ゆいげ
……… 高僧が臨終に際し、悟りの境地を詩文で表したもの。禅宗で重要とされる。
禅宗
………
辞世の句
………
茶杓
………
高弟
………
形見
………
銘
………
徳川美術館
………
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