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9-1|失われた茶の湯 ~明治維新と茶の衰退~|第9回 茶の湯の救世主|明治時代|茶道の歴史

全10回 茶道の歴史



明治維新後の京都の町並みを歩く人々と、「茶道の歴史 第九回 茶の湯の救世主 明治時代」と記された掛軸が描かれた、茶の湯が伝統の危機に直面した時代を象徴する冒頭画像。


第9回 茶の湯の救世主 (1/5)

 ― 明治時代 (1868年―1912年) ―






❚ 文明開化の波に消えかけた茶の湯

文明開化*の時代、茶の湯はなぜ姿を消しかけたのでしょうか?



時代の波に飲まれながらも、再興の希望は失われなかった——。



大名文化から町人文化へ、そして近代化の荒波のなか、茶の湯は大きな試練に直面しました。



今回は、明治時代における茶の衰退と、その先に見えた再生の兆しをたどります。

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❚ 明治維新による価値観の転換

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江戸幕府の崩壊と明治維新*を契機に、日本は急速な西欧化と近代化を迎えました。



これにより、それまで日本文化の中核にあった茶の湯もまた、大きな転換点を迎えることとなります。


衰退の大きな要因となったのは、茶の湯を支えてきた「大名」や「武士」の没落です。



これにより経済的・文化的な支援基盤を失い、茶道そのものが存続の危機に立たされました。


また、西洋の生活様式や思想が急速に広まり、日本文化全体への関心が低下。



茶室、茶道具、作法といった文化の一つひとつが「時代遅れ」とされる風潮が強まりました。


実際、明治四年(1871年)には姫路・酒井家の由緒ある茶道具が売りに出されたものの、ほとんど買い手がつかず、仏像や書画も二束三文で売却されるという悲惨な状況が記録されています。










❚ 再興のための努力

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このような状況の中でも、茶道界は再興の道を模索していました。


とくに『裏千家十三代/圓能斎』は、一時東京へ居を移し、当時の有力財界人と交流しながら茶道の存在を再認識させる努力を続けました。


さらに、三千家の御家元たちも教育界との連携を進め、「女性の教養」として茶道を学校教育(教養科目)に取り入れる動きが始まりました。



こうして茶道は「遊芸」から「教養」へと立ち位置を変えていくのです。


この時代にはまた、「立礼式*」の導入や、和洋折衷の点前様式の模索など、現代につながる数々の工夫と発明がなされました。











❚ ​“こころ”としての再出発

大きな衰退を経験しながらも、茶道はこの明治時代をきっかけに、再び“日本のこころ”として復活の兆しを見せ始めたのです。



明治という変革の時代に、一度は衰退の淵に立たされた茶の湯。



しかしその陰で、伝統を守り、未来へとつなぐ人々の努力がありました。



茶道は“教養”として新たな意義を得ながら、現代の文化として息を吹き返します。



次回は、この再興を支えた人物たちの功績をたどります。












登場人物


  • 裏千家十三代/圓能斎

……… 裏千家十三代|御家元|鉄中宗室|1872年―1924年|裏千家十二代/又玅斎の長男











用語解説



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文明開化

―ぶんめいかいか― 明治維新以後に急速に進んだ日本の近代化・西洋化を象徴する言葉です。政治・教育・衣食住・風俗などあらゆる分野において西洋の制度や文化が導入され、鉄道の開通、ガス灯の普及、洋装の広まりなどがその象徴とされました。従来の生活様式や価値観が大きく変化し、伝統と革新が交錯する中で、新たな国民意識と文化の形成が進められました。文明開化は近代国家への第一歩を示す時代の象徴です。

明治維新

―めいじいしん― 幕末から明治初期にかけて行われた日本の政治・社会の大変革で、1868年の王政復古を契機に始まりました。江戸幕府が倒れ、天皇中心の中央集権国家が築かれたことで、封建制度が廃止され、近代国家への道が開かれました。地租改正・廃藩置県・四民平等などの政策が進められ、西洋文明の導入とともに日本は急速な近代化を遂げました。明治維新は、日本の歴史における転換点とされています。

立礼式

―りゅうれいしき― 明治時代に『裏千家十一代/玄々斎』によって考案された、椅子とテーブルを用いる茶道の点前形式です。正座が難しい人や海外の賓客にも茶の湯を楽しんでもらうために工夫されたもので、伝統の精神を保ちながらも、形式にとらわれない柔軟な茶の在り方を体現する点前として、多様な場面で親しまれています。今日では各流派により、さまざまな形式の立礼棚が考案され、学校茶道や国際交流の場で広く用いられています。

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商品カテゴリー
茶道具|中古道具市
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