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8-4|一期一会 ~利休の言葉~|第8回 茶の湯の遊芸化|江戸時代(後期)|茶道の歴史

全10回 茶道の歴史



茶壷道中を見送る人々の姿と、「茶道の歴史 第八回 茶の湯の遊芸化 江戸時代(後期)」と記された掛軸が描かれた、一期一会の精神が受け継がれる茶の湯の心を象徴する冒頭画像。


第8回 茶の湯の遊芸化 (4/6)

 ― 江戸時代 (1603年―1868年) |後期 ―






❚ 茶会に宿る精神

たった一度の茶会、たった一度の出会い――。



そのひとときを大切にする心とは、どこから生まれたのでしょうか。



今回は、「一期一会」という言葉に込められた千利休の教えと、その精神の継承を見つめます。

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❚ 利休の教えに宿る「一期一会」

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『井伊直弼*』『茶湯一会集*』の中で記した「一期一会*」



この言葉は今日でも広く知られていますが、もともとは千利休が茶会に臨む際の心得として弟子に説いていた精神に基づいています。


その源泉となるのが、千利休の高弟であり豪商でもあった山上宗二が、天正十六年(1588年)に記した茶道の秘伝書『山上宗二記*』の一節です。



この中の「茶湯者覚悟十躰」に、次のような利休の言葉が記されています。


「路地ヘ入ルヨリ出ヅルマデ、一期ニ一度ノ会ノヤウニ、亭主ヲ敬ヒ畏ベシ」 訳) 路地に入ってから出るまでの茶会は、まるで一生に一度しかない出会いであるかのように、亭主を敬い畏れ、心を尽くして臨むべきである


この一節が「一期一会」の原型とされ、茶の湯におけるもっとも大切な精神として今日にも語り継がれているのです。











❚ 井伊直弼が言葉に託した精神

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この千利休の精神を、あらためて近世に明確な言葉として示したのが井伊直弼でした。


井伊直弼は著書『茶湯一会集』の中で「一期一会」の四文字を明確に記し、人生における茶会の尊さをあらためて説き直しました。


「その日、その席、その人との出会いは、二度と巡ってこないかもしれない」



この謙虚で真摯な姿勢こそが、茶道の根底を成すものであり、現代の私たちにも深い気づきを与えてくれるのです。











❚ 「一期一会」に込められた永遠の教え

茶室の中で交わされる一碗の茶に、すべての心を尽くす――。



「一期一会」は、千利休の教えを受け継ぎ、井伊直弼によって言葉として結実した、茶道の精神の核といえる考え方です。



その心は、今も私たちの人との出会いや日々の暮らしに、静かに寄り添い続けています。











登場人物


  • 井伊直弼

……… 江戸幕府大老|彦根藩十六代藩主|井伊宗鑑|1815年―1860年|俳諧の祖


  • 千利休

……… 千家開祖|抛筌斎 千宗易(利休)|1522年-1591年|天下三宗匠|茶道の大成者


  • 山上宗二

……… 豪商|茶人|1544年―1590年|千利休の高弟










用語解説



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井伊直弼

―いい・なおすけ― 1815年―1860年。室町時代後期の連歌師・俳諧師で、蕉風俳諧に先立つ「俳諧の祖」と称される人物です。堺を拠点に活躍し、宗祇や心敬の流れを汲みながらも、自由で洒脱な作風を確立しました。『宗鑑発句集』などの著作で知られ、後の俳諧や茶の湯文化にも大きな影響を与えました。和歌・連歌の格式を離れ、庶民的な感覚を取り入れたその姿勢は、近世文芸の礎とも言えます。

茶湯一会集

―ちゃとういちえしゅう― 井伊直弼(1815–1860)が著した茶道書で、茶の湯における心得や精神を簡潔に記しています。中でも「一期一会」の語を明確に説いたことで知られ、茶会はその一瞬に全力を尽くすべき貴重な出会いであると説きました。実践的な心得と精神性が平易な文体でまとめられており、現代の茶人にも広く親しまれています。直弼の深い茶道観をうかがえる貴重な著作です。

一期一会

―いちごいちえ― 「一生に一度の出会い」という意味を持ち、茶道において特に重んじられる言葉です。どの茶会も二度と同じものはなく、亭主と客が心を尽くしてその瞬間に向き合うことの大切さを教えています。千利休の精神を受け継ぎ、江戸時代には井伊直弼が『茶湯一会集』でその意義を説きました。茶道に限らず、人との出会いや日々の出来事を大切にする日本人の美意識を象徴する思想です。

山上宗二記

―やまのうえそうじき― 千利休の高弟、『山上宗二』が記した茶道の心得書で、安土桃山時代の茶の湯を知る上で極めて重要な資料です。利休の教えや道具に対する考え方、茶の湯の精神を率直に綴っており、「茶湯者覚悟十体」などは茶人の心構えを示す代表的な一文とされています。宗二の個性的な視点と当時の茶風を伝える内容は、現在も茶道の学びにおいて貴重な指針となっています。

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茶道具|中古道具市
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