9-2|国宝「待庵」|09.利休の茶室|千宗易利休|抛筌斎
- ewatanabe1952

- 2023年5月3日
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全10回 抛筌斎 千宗易 利休

利休の茶室
― 国宝 「待庵」 ―
❚ 待庵
国宝**茶室「待庵」とは京都府乙訓郡大山崎町にある仏教寺院「妙喜庵**」内にのこる日本最古の茶室です。
この茶室「待庵」は千利休*が携わったことが確実にわかる唯一の遺構であり、昭和二十六年(1951年)、国宝に指定された貴重な文化財です。
この茶室は、「躙り口**」を備えた「二畳隅炉**の小間席**」であり、現代の――草庵茶室**――の原型ともいえる重要な建築です。
華美な装飾を排し、最小限の空間で最大限の精神的価値を引き出すという利休の思想が、建築の隅々にまで反映されています。
❚ 待庵のあゆみ
天正十年(1582年)、天下分け目の合戦といわれる『天王山(山崎)の合戦**』の後、豊臣秀吉*は山崎の天王山に築城を開始し、その際に利休を招いて、城下に「二畳隅炉」の茶室を建てさせたと伝えられています。
その後、慶長年代(1596年-1615年)頃に解体し、「妙喜庵」に移築されたとされています。
また慶長十一年(1606年)に描かれた『宝積寺絵図**』には、今日の「待庵」の位置に囲いの書き込みがあり、この頃にはすでに現在地に移築されていた可能性が高いとされています。
さらに同図には「妙喜庵」の西方、現在の島本町の山崎宗鑑*旧居跡付近に「宗鑑やしき」そして「利休」の記載も見られます。
このことから一時期、利休がこの付近に住んでいた可能性があり、「待庵」が利休屋敷から移築された可能性も考えられますが詳細は不明とされています。
❚ 寺号「妙喜庵」
「妙喜庵」の寺号は、中国宋代の臨済宗**僧/大慧宗杲*の庵号『妙喜』に由来するとされ、さらにこの地には連歌の祖とされる山崎宗鑑が住んでいたとの説がある。
ただし山崎宗鑑の旧居は大阪府三島郡島本町にある関大明神社**前が有力とされ、その詳細は不明。
❚ 茶室は日本の宝

「待庵」は日本国内において国宝に指定されている三つの茶室の内の一室で、以下の二室とともに、日本の茶室建築の歴史において極めて重要な存在です。
■ 如庵 ―――
愛知県犬山市・有楽苑** 昭和十一年(1936年)に重要文化財(旧国宝)に認定。 織田信長*の弟:織田有楽斎*が建てたとされる二畳半台目**の茶室。
■ 密庵 ―――
京都府・大徳寺**/龍光院** 昭和三十六年(1961年)に龍光院書院全体として国宝に指定。 遠州流**開祖/小堀遠州*ゆかりの四畳半台目の茶室。
❚ 茶室のはじまり

「待庵」は、日本における「小間席茶室」の原型であり、現代の茶室に見られる「躙り口」構造の起源ともされています。
その設計思想は、後の数寄屋建築**の基盤となり、日本建築全体にも多大な影響を与えました。
利休が追求した「わび茶」の精神が最も純粋に表現された茶室として知られ、簡素で機能的な構成や、限られた空間を活かす巧みな工夫が随所に見られます。
「待庵」は、単なる茶室を超えて、日本の美意識と精神文化を象徴する建築として位置づけられ、茶道史・建築史の両面において極めて重要な存在となっています。
❚ 次回は・・・
次回の「9-3|黄金の茶室|09.利休の茶室」では、秀吉の権力を象徴する「黄金の茶室」と利休の関わりを通じて、利休の思想との対比を読み解きます。
登場人物
千利休|せん・りきゅう
……… 天下三宗匠|千家開祖|抛筌斎|千宗易|1522年―1591年
豊臣秀吉|とよとみ・ひでよし
……… 天下人|関白|太閤|1536年―1598年
山崎宗鑑|やまざき・そうかん
……… 。
大慧宗杲|だいえ・そうこう
……… 。
織田信長|おだ・のぶなが
……… 。
織田有楽斎|おだうらくさい
……… 。
小堀遠州|こぼりえんしゅう
……… 。
用語解説
国宝|こくほう
……… 。
妙喜庵|みょうきあん
……… 京都・大山崎にある臨済宗の寺院。待庵を所蔵。
躙り口|にじりぐち
……… 客がかがんで茶室に入るための小さな出入口。
隅炉|すみろ
……… 茶室の隅に設けられた炉。省スペースかつ効果的な設計。
草庵茶室|そうあんちゃしつ
……… 利休が確立した簡素・静謐を旨とする小規模な茶室様式。
小間席|こませき
……… 二畳や三畳台目など、狭小空間の茶室。草庵茶室の基本形。
山崎の合戦|やまざきのかっせん
……… 。
宝積寺絵図|ほうしゃくじえず
……… 。
関大明神社|せきだいみょうじんしゃ
……… 。
臨済宗|りんざいしゅう
……… 。
有楽苑|うらくえん
……… 。
台目|だいめ
……… 。
大徳寺|だいとくじ
……… 。
龍光院|りゅうこういん
……… 。
遠州流|えんんしゅうりゅう
……… 。
数寄屋建築|すきやけんちく
……… 茶室に代表される、意匠性と機能性を兼ねた建築様式。

