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2-9|利休の史料|02.利休の生涯|千宗易利休|抛筌斎

全10回 抛筌斎 千宗易 利休



千利休の人物イラストと掛物「利休の生涯」を組み合わせた構成で、利休の書状や記録に見る実像を伝える冒頭画像。


利休の生涯

― 利休の史料 ―






❚ 利休の史料

これまで述べたように千利休*の生涯をたどるには、利休の思想や美学を裏付ける史料の存在が欠かせません。



本稿では、利休の人物像を立体的に描くために残された古典文献・千家伝来の記録・自筆書状などの主な史料を紹介し、茶の湯の精神がどのように後世に伝わっていったのかを探っていきます。











❚ 一般史料

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千利休を知る上で、代表的な文献史料として以下のものが挙げられます。



山上宗二*『山上宗二記**』 南坊宗啓*『南方録**』 古田織部*『織部百ヶ条**』 松屋久重*『松屋会記**』『茶道四祖伝書**』 久須美疎安*『茶話指月集**』

​❞


これらの史料には、利休の茶の湯の思想や作法、歴史的背景に関する記録が詳細に残されています。



特に、利休の高弟であった山上宗二が記した『山上宗二記』 では、利休が 六十歳まで村田珠光*武野紹鷗*の茶の道を踏襲し、天正十年(1582年)の「本能寺の変**」以後の六十一歳から自身の茶を確立したと記されています。











❚ 千家史料

千家においては「不立文字**」が基本とされるが、以下の文献が残されています。


表千家四代/逢源斎江岑宗左*『江岑夏書**』『千家系譜**』『千利休由緒書**』 表千家五代/随流斎良休宗左*『隋流斎延紙ノ書**』

❞​



これらは、――千家の系譜――や――利休の由緒――、――茶の湯の伝承――を後世に伝えるための貴重な史料とされている。










❚ 書状

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これまでの史料以外にも利休は多くの書状を遺しており、その中には茶道具に添えた文や、門弟・知人に宛てた書状が含まれています。

​​


■ 武蔵鐙の文 ―――

古田織部に宛てた書状。(東京国立博物館蔵)


■ 蟄居見舞いの返書 ―――

芝山監物に宛てた返書。(裏千家今日庵蔵)


■ 手桶の文 ―――

喜三に宛てた書状。(表千家不審庵蔵)


■ 大仏普請の文 ―――

伊勢待従に宛てた書状。(大阪城天守閣蔵)


■ 大徳寺門前の文 ―――

平野勘兵衛に宛てた書状。(大阪城天守閣蔵)


■ 永代供養の文 ―――

大徳寺/聚光院**に宛てた寄進と供養の願文。(大徳寺聚光院蔵)



これらの書状は、千利休の思想や当時の状況を知る上で極めて貴重な史料となる。



利休自筆の真蹟**や書状は織田信長*参仕**以前の物はほぼ現存せず豊臣秀吉*の参仕時代の物が中心となっている。













❚ 署名

利休の署名には以下ののように変遷が見られる。



■ 天正十三年 (1585年)以前 ―――

「抛筌斎宗易」


■ 天正十三年 (1585年)以後 ―――

「利休宗易」



これは、天正十三年(1585年)の禁中茶会**において「利休居士号」を勅賜**されたことに起因すると考えられる。











❚ 代筆

利休の書状については代筆の可能性が指摘されており、「祐筆(代筆者)**」として鳴海宗温*が知られているが、長男の千道安や千少庵宗淳が代筆した可能性も指摘されているが詳細は不明。











❚ 利休を伝える書

千利休の思想と実践の全容を把握するには、文献と書状の双方を組み合わせた読解が必要です。



山上宗二記をはじめとした古典、千家による後世の整理、自筆書状の存在は、利休の実像を今に伝えるかけがえのない手がかりとなっています。












❚ 次回は・・・

次回の「3-1|遺偈とは|03.利休の遺偈」では、「遺偈」という言葉の意味や、禅宗の思想における位置づけを踏まえながら、遺偈とはなにかを紐解きます。











登場人物


  • 千利休|せん・りきゅう

……… 天下三宗匠|千家開祖|抛筌斎|千宗易|1522年―1591年


  • 山上宗二

………


  • 南坊宗啓

………


  • 古田織部

………


  • 松屋久重

………


  • 久須美疎安

………


  • 村田珠光

………


  • 武野紹鴎

………


  • 逢源斎江岑宗左

………


  • 随流斎良休宗左

………


  • 古田織部|

……… (1544–1616):秀吉茶頭。利休七哲。


  • 芝山監物

………


  • 喜三

………


  • 平野勘兵衛

………


  • 織田信長

………


  • 豊臣秀吉

………


  • 鳴海宗温

………











用語解説


  • 山上宗二記

………


  • 南方録

………


  • 織部百ヶ条

………


  • 松屋会記

………


  • 茶道四祖伝書

………


  • 茶話指月集

………


  • 本能寺の変

………


  • 千家

………


  • 不立文字|ふりゅうもんじ

……… 言葉や文字によらず、心から心へと伝える禅的思想。千家ではこれを重視する。



  • 江岑夏書

………


  • 千家系譜

………


  • 千利休由緒書

………


  • 伊勢侍従

………


  • 大徳寺

………


  • 聚光院

………


  • 真筆

………


  • 参仕

………


  • 禁中茶会

………


  • 居士号|こじごう

……… 禅宗における在家の修行者に与えられる名誉称号。「利休居士」は天皇勅賜による名。


  • 勅賜

………


  • 代筆

………


  • 祐筆|ゆうひつ

……… 文書の作成・代筆を担った役職・人物のこと。











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茶道具|中古道具市
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