3-7|唐物道具の登場 ~茶の湯が愛した異国の器~|第3回 喫茶のはじまり|鎌倉時代|茶道の歴史
- ewatanabe1952

- 2023年3月5日
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全10回 茶道の歴史

第3回 喫茶のはじまり (7/8)
― 鎌倉時代 (1192年―1333年) ―
❚ 茶を引き立てる美
一碗の“茶”を引き立てるのは、器の美しさか、それともその物語か――。
遥か海を越えて届いた美しい道具たちは、一服の“茶”に新たな価値と格式を与えていきます。
今回は、“茶の湯”における「唐物道具**」の登場を紐解きます。
❚ 宋・元との交易と唐物の流入

その結果、“墨蹟**”や“茶入**”“天目**”“花入”“香炉**”“織物”などの工芸品や、“書物”“薬品”などが大量に輸入されることとなりました。
これらの品々は一括して「唐物**」と尊称され、とりわけ“茶”を喫する際の「茶道具**」として重宝されていくようになります。
また鎌倉幕府第十二代連署**「金沢貞顕*」が記した手紙には、
❝
鎌倉では唐物を使った茶がたいへん流行しています
❞
との記述があり、当時の人々が唐物に強い関心を寄せていた様子がうかがえます。
❚ 海を越えた陶磁器の足跡

昭和五十一年(1976年)に行われた調査において、中国から朝鮮半島を経由して日本に向かう外洋帆船の沈没船より、約2万点に及ぶ陶磁器**が発見されました。
その中には―“至治三年(1323年)六月一日”―と記された荷札をはじめ、のちの“茶の湯”で重要視される“茶入”“花入”“天目”などの茶道具が数多く含まれており、当時すでに“茶の湯”に適した道具が大量に輸入されていたことが明らかとなりました。
異国の器とともに、日本の“茶の湯”文化は静かに、しかし着実にその歩みを進めていたのでした。
❚ 茶の湯に宿る美と格

唐物道具の登場は、“茶”を嗜むという行為に新たな“格”をもたらしました。
単なる実用品ではなく、そこに宿る物語や美意識が、“茶の湯”に深みと奥行きを与えていきます。
次回は、こうした“茶の湯”の様式が、どのようにして―書院茶湯―として整えられていったのかをたどります。
登場人物
金沢貞顕
1278年―1333年|北条貞顕|鎌倉幕府第十二代連署|北条実時の孫
用語解説
唐物道具
―からものどうぐ―
墨蹟
―ぼくせき― 禅僧が筆で書いた書のこと。中国の高僧の墨蹟は、精神性と芸術性を兼ね備えたものとして茶室に掛けられ、茶の湯における精神的支柱のひとつとされる。
茶入
―とうちゃ―
天目
―てんもく―
香炉
―こうろ―
茶道具
―さどうぐ―
連署
―れんしょ―
書院茶湯
―しょいんちゃゆ―
金沢貞顕
―かなざわ・さだあき―
陶磁器
―とうじき―

